9月に入って急に研究会が増えてきました。先週は実に月曜日〜土曜日まで6日連日で研究会・講習会の予定がありました。さすがに全て参加することは出来ず4回の出席に留まりましたが、それでも連日の研究会参加は結構きついです。
その中で、9/8 (火) には「抗血栓療法の現状と課題 〜薬剤起因性消化管傷害を含めて〜」という演題名で、名古屋大学循環器内科講師の石井秀樹先生にご講演を賜りました。
ご講演内容は、まず虚血性心疾患に対する抗血栓薬の必要性から始まり、ステント治療時になぜ抗血小板薬の2剤併用療法 (DAPT) が必要かを、わかりやすく解説していただきました。DAPTの期間を今後どうするか(現行ガイドラインでは最低12ヶ月のDAPT期間が推奨されています)については様々な議論があり、まだ定まっていないのが現状ですが、ご講演内容から全ての患者さんに一律のDAPT期間を求めるのではなく、出血のリスクと血栓予防のベネフィットを考慮して、個別に決めるのがよいのではないかと感じました。
続いて石井先生は、抗血栓薬による消化管出血のリスクについて解説され、特に消化管出血を起こした虚血性心疾患患者さんは予後が悪いことを教えていただきました。これは、消化管出血を起こすと一時的に抗血栓薬を中止せざるを得なくなり、その結果ステント血栓症を含めた虚血性イベントが増えることが最も大きな理由のようです。そのためにも消化管出血は予防する必要があるのですが、石井先生はプロトンポンプ阻害薬 (PPI) の有用性に言及され、標準用量のPPIを併用すれば、かなり消化管出血は減らせるとのことでした。
最後に石井先生は、抗血栓薬に関する最近の話題として新規抗血小板薬および抗血小板薬の代謝酵素であるCYP2C19の遺伝子多型について解説されました。今までの抗血小板薬は、患者さんの持つ遺伝子の型によって効果に差が出る可能性があるのですが、新しい抗血小板薬では遺伝子の型の影響を受けにくく、安定した効果が望めるとのことでした。
最後のディスカッションでは、医療者間の連携について話が及びました。循環器専門医とかかりつけ医の情報共有がしっかりされることで、適切な抗血栓療法が行えますし、循環器内科医と消化器内科医が連携を密に行うことで、消化管出血の再発を防げる可能性も高まると思います。
今回のご講演内容は、自分の抗血栓療法に対する知識の再確認とブラッシュアップに大変役立つ内容でした。石井先生、どうもありがとうございました。