8/27 (土) には平成28年度豊橋市医師会卒後研修会が開催されました。昨年もご紹介しましたが、本研修会は必ずしも医療に直接関係する内容である必要はなく、演者も医療関係者に限らず幅広い分野の方々からお話を伺おうとするものです。本年度は「自閉症と化学物質 ―誘発物質探査の現状と自閉症からの回復の試み―」という演題名で、豊橋技術科学大学 環境・生命工学系講師の吉田祥子先生にご講演を賜りました。今回は自閉症関連のテーマでしたので、比較的医療との関連が深い内容だったものの、やはり通常の研究会とは切り口の異なった、新鮮な驚きが詰まったお話となりました。
普段我々が自閉症関連で講演を聴講する場合には、自閉症の診断やその後の支援のあり方について焦点を当てたものが多い印象があります。もちろんそれらは医療者にとって大変重要なテーマなのですが、今回吉田先生は科学者としての視点から、コホート研究の結果を元に自閉症を引き起こす可能性がある環境因子を紹介されました。次に先生は、それらの因子について実際に動物実験で検証を行い、病理学的に脳(特に小脳)にどのような変化が起きているのかを解説されました。自閉症を「脳」の問題として捉え、科学的に探求している姿勢には大変感銘を受けました。
また後半では、「自閉症は治るのか」という非常にインパクトの強いテーマについて、いくつかの文献的考察を交えながらご紹介いただきました。今回のご講演の中で名前の出た薬剤については、いずれも国内では適応外のため具体的な名前を出すことを控えさせていただきますが、先天的な障害として(治らない疾患として)自閉症を捉えて来た我々にとっては、十分に刺激的な内容でした。
吉田先生は最後に、自閉症はもはや病ではなく人類の一つの類型であり、自閉症を緩和する「技術」あるいは自閉症を容認する「社会」を開発する必要があるのではないか、という問題を提起して講演を終了されました。先生には是非今後も研究を発展させていただき、自閉症の人たちや現代社会に対して光明をもたらしていただければと思います。吉田先生、本当にありがとうございました。