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10月の研修内容

10月は何かと気ぜわしく、ゆっくりと「Doctor’s Topics」を書く余裕もないまま過ぎてしまいました。それでも10月全体では10回ほど研究会に参加してきました。その中で強く印象に残っているのは、10/5 (水) の東三学術講演会で豊橋ハートセンター循環器内科医長の羽原真人先生がご講演された「コレステロール代謝と冠動脈硬化病変との関連性〜最適なコレステロール低下療法への考察〜」や、10/13 (木) の豊橋内科医会研修会で聖霊浜松病院副院長の山本貴道先生がご講演された「てんかんの理解と診療の基本〜脳神経系専門医との連携を推進するために〜」、さらには10/25 (火) の疼痛診療セミナーin豊橋で浜松医科大学整形外科学教授の松山幸弘先生がご講演された「痛みの発生メカニズムに基づいた最新の診断・治療」などです。
我々かかりつけ医は、自身の専門分野については最新の知識を維持したいと思う一方で、専門分野以外の知識も幅広く取り入れたいと考えています。そういった意味で10月は、私の専門分野である循環器内科に関する講演から始まって、神経内科や整形外科といった非専門分野まで幅広くお話を伺う機械を得ることが出来て、忙しいながらも充実した一ヶ月だったと思います。実は11月も多くの研究会が予定されていますので、時間が許す限り参加して知識を吸収し患者さんの診療へ還元したいと思います。

穂の国Total Care Seminar

9/15 (木) は「穂の国Total Care Seminar」が豊橋ハートセンターで開催され、特別講演として「リポ蛋白レベルでは語れない脂質の代謝」という演題名で、大阪市立大学大学院医学研究科 血管病態制御学 准教授の庄司哲雄先生にご講演を賜りました。
脂質代謝の分野は、PCSK9阻害薬という新しいコレステロール治療薬が出て来たこともあり、再び注目を集めています。リポ蛋白は簡潔に言うとコレステロールや中性脂肪を運ぶ粒子で、大きさ (比重) によってVLDL (超低比重リポ蛋白)、LDL (低比重リポ蛋白)、HDL (高比重リポ蛋白) などに分けられます。まず先生は、復習を兼ねてリポ蛋白代謝について非常にわかりやすく解説していただきました。私はいろいろな研究会でリポ蛋白代謝の話を聞いてきましたが、庄司先生の説明が最も理解しやすく、かつコンパクトにまとまっていると感じました。また、わかりにくい高脂血症のタイプ分類 (I型〜V型) についても、頻度の低いI型、III型、V型を除いて簡易的に分類する方法を教えていただき、まさに目から鱗が落ちる思いでした。
次に先生はそれぞれの高脂血症に対する治療法について解説され、さらに治療を行う上でのガイドラインについても言及されました。一般的にガイドラインは、管理目標値を設定しそれを達成すべく治療を行うもの (Treat to Target方式) が一般的ですが、最近のガイドラインの中には、目標値を設定せずに治療を行うもの (Fire and Forget方式) があり、2013年に出されたアメリカの脂質治療ガイドライン (ACC/AHA Guideline) などがこれに当たります。どちらがよいかは議論があり一概に言えないと思いますが、今後は医療経済学的な側面も含めて考える必要があるのかもしれません。
最後に先生は、本題であるリポ蛋白レベルではない脂質代謝 = 脂肪酸代謝について、脂肪酸の分類や脂肪酸と心血管イベント (心筋梗塞や脳卒中など) との関連も含めて解説されました。EPA (エイコサペンタエン酸) やDHA (ドコサヘキサエン酸) はω-3系多価不飽和脂肪酸に分類され、大規模臨床試験による心血管イベント抑制のエビデンスが存在します。しかしスタチンなどに比べるとエビデンスが少ないこと、必ずしも有効性が示されない臨床試験が存在することも事実で、今後さらなるエビデンスの蓄積が必要だと感じました。
今回は庄司先生のおかげで、脂質代謝に関する自分の中の知識を整理するとともに新たな知識を得ることが出来ました。庄司先生、お忙しい中ご講演ありがとうございました。

平成28年度卒後研修会

8/27 (土) には平成28年度豊橋市医師会卒後研修会が開催されました。昨年もご紹介しましたが、本研修会は必ずしも医療に直接関係する内容である必要はなく、演者も医療関係者に限らず幅広い分野の方々からお話を伺おうとするものです。本年度は「自閉症と化学物質 ―誘発物質探査の現状と自閉症からの回復の試み―」という演題名で、豊橋技術科学大学 環境・生命工学系講師の吉田祥子先生にご講演を賜りました。今回は自閉症関連のテーマでしたので、比較的医療との関連が深い内容だったものの、やはり通常の研究会とは切り口の異なった、新鮮な驚きが詰まったお話となりました。
普段我々が自閉症関連で講演を聴講する場合には、自閉症の診断やその後の支援のあり方について焦点を当てたものが多い印象があります。もちろんそれらは医療者にとって大変重要なテーマなのですが、今回吉田先生は科学者としての視点から、コホート研究の結果を元に自閉症を引き起こす可能性がある環境因子を紹介されました。次に先生は、それらの因子について実際に動物実験で検証を行い、病理学的に脳(特に小脳)にどのような変化が起きているのかを解説されました。自閉症を「脳」の問題として捉え、科学的に探求している姿勢には大変感銘を受けました。
また後半では、「自閉症は治るのか」という非常にインパクトの強いテーマについて、いくつかの文献的考察を交えながらご紹介いただきました。今回のご講演の中で名前の出た薬剤については、いずれも国内では適応外のため具体的な名前を出すことを控えさせていただきますが、先天的な障害として(治らない疾患として)自閉症を捉えて来た我々にとっては、十分に刺激的な内容でした。
吉田先生は最後に、自閉症はもはや病ではなく人類の一つの類型であり、自閉症を緩和する「技術」あるいは自閉症を容認する「社会」を開発する必要があるのではないか、という問題を提起して講演を終了されました。先生には是非今後も研究を発展させていただき、自閉症の人たちや現代社会に対して光明をもたらしていただければと思います。吉田先生、本当にありがとうございました。

インフルエンザワクチン予防接種講習会

今回はいつもと若干趣を変えて、インフルエンザワクチン予防接種講習会についてご紹介したいと思います。豊橋市医師会では毎年この時期に、10月から始まる高齢者インフルエンザワクチン予防接種に関する講習会を開催しています。予防接種を行う医療機関は、原則として全て出席することが義務づけられており、出席しない場合は公費を利用した予防接種を行うことが出来ないという厳しいルールがあります。しかし、そのおかげで皆がインフルエンザに関する最新の情報や知識を共有でき、安全かつ正しい予防接種を行える訳ですから、非常に重要な講習会とも言えるのではないでしょうか。
毎年この講習会には、ワクチン研究に関する大変ご高名な先生が来られるのですが、今年 (7/30) も「インフルエンザの疫学研究 〜ワクチンの有効性評価や異常行動の関連因子を例に〜」という演題名で、大阪市立大学大学院 医学研究科 公衆衛生学教授の福島若菜先生にご講演を賜りました。
疫学というと、我々かかりつけ医にとってはやや馴染みの薄い学問ですが、福島先生は「疫学とは」から始まり、「疫学と統計学との違い」や「ワクチンの効果をどのように評価するか」、さらには「インフルエンザワクチンの有効性評価方法」について大変熱心にご講演され、特に「test-negative design」という評価方法についてご自身のデータを交えて解説していただきました。それにしても、一つのワクチンの有効性を調査・評価することがどれだけ大変であるかということを改めて知りました。
先生は最後に、自ら厚生労働省の研究班のメンバーとして行った、タミフル内服による異常行動・異常言動に関する調査班の研究結果にも触れられて講演を終了されましたが、私自身、大規模臨床研究を理解する上で疫学的手法を理解することが大変重要だと実感していることもあり、今回のご講演内容を大変興味深く拝聴しました。福島先生、本当にありがとうございました。
なお本年度(平成28年度)の豊橋市高齢者インフルエンザワクチン予防接種は、10/11 (火) から始まる予定です。

豊橋内科医会

7/14 (木) の豊橋内科医会研修会は、「これからの糖尿病治療」という演題名で、洪内科クリニック院長の洪尚樹先生にご講演を賜りました。洪先生は糖尿病領域では大変ご高名な先生で、豊橋にも過去に数回お越し頂いていますが、今回は特に動脈硬化を克服するための糖尿病治療に焦点を当てて、ご講演いただきました。
洪先生は、まずこれまでの糖尿病治療の目的が細小血管障害である網膜症・腎症・神経障害を予防することであり、これについてはほぼ達成可能なところまで来ていることを概説されました。その上で、これからの糖尿病治療戦略として如何に動脈硬化を予防するかが重要であると強調され、そのための治療薬に求められる条件として、①単独で低血糖を起こさないこと、②食後高血糖を改善すること、③高インスリン血症を改善すること、④脂質代謝異常を改善すること、⑤肥満を解消すること、が重要であると解説していただきました。
また、これらを踏まえた上でEMPA-REG OUTCOME試験の結果に触れられ、SGLT2阻害薬の持つ可能性について言及されました。EMPA-REG OUTCOME試験については、6月のアメリカ糖尿学会でサブ解析の結果が発表され、腎機能を改善する可能性も指摘されていることから、今後ますますSGLT2阻害薬の重要性が増すだろうと思われます。また、同時期に発表されたLEADER試験にも触れられ、GLP-1受容体作動薬であるリラグルチドが心血管イベントを抑制する可能性について解説していただきました。ただしLEADER試験で使用されたリラグルチドは約1.8mg/日であり、日本での承認用量 (0.9mg/日) とは異なっている点に注意する必要がありそうです。
最後に、洪先生は動脈硬化を予防するための糖尿病治療薬としてチアゾリジン薬、SGLT2阻害薬、α-グルコシダーゼ阻害薬、ビグアナイド薬を挙げられ、これらを上手に組み合わせることで、動脈硬化の発症・進展を克服できるのではないかと解説していただきました。洪先生のご講演は、いつも切れ味が鋭く核心を突いた内容で感銘を受けるのですが、今回も最新の大規模臨床試験の結果を踏まえつつ、大変わかりやすい内容となっていました。洪先生、本当にありがとうございました
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