昨日 (5/13) は「心不全治療を考える 2015」という研究会があり、座長を務めさせていただきました。「心不全治療」というテーマでしたが、今回は特にTAVI(経カテーテル大動脈弁植え込み術)にフォーカスを当てた内容とさせていただきました。
重症の大動脈弁狭窄症 (AS) に対しては、従来開心術による人工弁置換術 (AVR) が行われており、現在もAVRが標準治療であることに変わりはありません。しかし高齢化を背景に発症するASの場合、様々な合併疾患(心筋梗塞、脳梗塞、慢性閉塞性肺疾患、腎不全、認知症など)を有することが多く、手術不能とされる場合も少なくありませんでした。TAVIは、このようなハイリスク症例や手術不能例に対して、カテーテルを用いて人工弁を植え込むもので、2002年に世界で初めて行われて以降、欧米で急速に広まった治療法です。遅ればせながら日本でも2013年に保険償還され、昨年 (2014年) からは豊橋ハートセンターでも行われています。この治療が行える施設は限られており、現在全国で53施設、うち愛知県では豊橋ハートセンター以外に名古屋ハートセンター、名古屋第一赤十字病院、藤田保健衛生大学病院が施設認定を受けています。
昨日はミニレクチャー2題に引き続き、「TAVI導入から1年のハートセンターの現状」という演題名で、豊橋ハートセンターの山本先生にご講演いただきました。この1年間で54例、名古屋ハートセンターを合わせると60例という症例数とその良好な成績にも驚きましたが、患者さんの持つ様々な問題点に真摯に向き合う山本先生の姿勢に大変感銘を受けました。
また講演後に「Q&A / ディスカッション」として5名の先生方にご登壇いただき、
・高齢化によるASの特徴について
・AVRとTAVIの適応の違いについて(TAVIは何歳まで、あるいはどの程度の全身状態まで施行可能か)
・検査で重症ASが見つかっても症状がごく軽微な場合にどうするか
・TAVI施行後の抗凝固療法・抗血小板療法をどのように行うか
・TAVI施行後、病診連携を通じてかかりつけ医でfollow upすることは可能か
などの観点から、活発な議論が繰り広げられました。
この研究会を通じてTAVIという新しい治療に対して少しでも理解が深まり、恩恵を受けられる患者さんが増えれば幸いです。