さて、引き続き「第二回高齢者心房細動のトータルケア講演会 〜抗凝固療法はどうあるべきか〜」の話題です。今回は井澤先生の特別公演に続いて行われたパネルディスカッション「高齢者心房細動のトータルケア 〜今現場ではどのように考えているか〜」についてご紹介します。パネルディスカッションでは3名の先生にご登壇いただき、各々内容を10分程度にまとめて話していただきました。
まず豊橋市民病院の冨田崇仁先生からは「アブレーションとリスク管理」というテーマで、日本人心房細動患者の平均年齢は73.9歳と高く75歳以上のアブレーション施行例が増加していること、アブレーション周術期およびアブレーション後の抗凝固療法は原則として休薬や中止はしない方針であること、などを解説していただきました。
次に豊川市民病院の鈴木健先生からは「心房細動とリスク管理 (高血圧) 」というテーマで、心房細動の発症に高血圧が強く関連していること、心房細動患者では脳塞栓・脳出血のいずれにも高血圧が深く関与していること、などを解説していただきました。
最後に渥美病院の三谷幸生先生からは「〜今現場ではどのように考えているか〜 高齢者の抗凝固療法を中心として」というテーマで、実際の症例を交えながら心房細動治療の目的 (自覚症状の改善、心不全の予防/治療、塞栓症の予防) と高齢者特有の難しさ (フレイルや認知症、ポリファーマシーやアドヒアランス低下、腎機能低下、転倒リスク、出血性疾患の並存、経済的理由や施設入所など) を解説していただきました。
その後のディスカッションでは、細川先生と井澤先生にもオブザーバーとして加わっていただき、会場のご質問も受け付けながら進行させていただきました。3名のパネリストの発表から浮かび上がった疑問点、例えば ①高齢者 (あるいは超高齢者) におけるアブレーションの適応、②高齢者の高圧目標値と薬剤選択、③超高齢者でも抗凝固療法を積極的に行うべきか否か、④フレイルや腎機能低下を有する場合の抗凝固療法の注意点、などについて議論を深めることができました。
ディスカッションの最後には座長からの話題提供として、最近欧米で行われた Apple watchを用いた心房細動検出の大規模観察試験 (11/14に New England journal of Medicineに掲載) について紹介し、無自覚の心房細動をどうやって見つけ出すか、という重要なテーマについての問題提起をさせていただきました。今後このテーマでの議論がますます深まることを期待したいと思います。
座長の不手際で、終了時間が15分ほど延長してしまいご迷惑をおかけしましたが、その分十分なディスカッションができたのではないかと思っています。井澤先生を初めとして、細川先生、冨田先生、鈴木先生、三谷先生、参加いただいた先生方、誠にありがとうございました。