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研究会・講演会の中止について

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、医療界でも研究会や講演会を延期または中止する動きが広がっています。特に先週から開催を控える動きが活発になり、2/21 (金) には日本循環器学会総会 (3/12〜15開催予定)の開催延期が発表されました。豊橋でも同様で、来週開催される予定だった研究会は全て中止の方向に向かっています。全国規模の学会はともかく、少人数で開催される研究会まで中止するのは過剰反応ではないか、といったご意見ももちろんあると思います。ただ、終息どころかまだまだ拡大を続けそうな状況下で、万が一医療関係者の中で感染拡大が起こってしまうと地域の医療体制に深刻な影響を与えかねないので、個人的にはやむを得ない措置ではないかと考えています。
なお、2/25 (火) には政府によって新型コロナウイルス感染症に対する「基本方針」が決定されるようですので、この発表を受けて豊橋医師会でも早急に対応を協議することになるかと思います。

CAD合併心房細動について考える会

1/30 (木) には「東三河 CAD合併心房細動について考える会」が開催されました。ご存知の方も多いかと思いますが、日本国内で行われた大規模臨床試験であるAFIRE研究の結果が昨年のヨーロッパ心臓病学会のHot Line Sessionで発表され、同日にThe New England Journal of Medicine (NEJM) 誌に掲載されました。AFIRE研究は、安定した冠動脈疾患を合併する心房細動患者を対象に経口抗凝固薬リバーロキサバン単独とリバーロキサバン+抗血小板薬併用との比較を行った多施設共同のランダム化比較研究です。約2年間の観察期間において、有効性の一次エンドポイント (脳卒中、全身性塞栓症、心筋梗塞、血行再建術を必要とする不安定狭心症、総死亡の複合エンドポイント) ではリバーロキサバン単剤療法群の併用療法群に対する非劣性が証明されるとともに、安全性の一次エンドポイント (重大な出血性合併症) においても、リバーロキサバン単剤療法群の併用療法群に対する優越性が証明されました。簡潔に言えば「効果は同じで副作用が少ない」といったところでしょうか。循環器領域で日本人の臨床研究がNEJM誌に採択されたのは久しぶりとのことで、専門医の間ではかなり盛り上がっているのですが、今回は広く非専門医の先生方にも知っていただくために、AFIRE研究の共同執筆者である九州大学病院 循環器内科講師の的場哲哉先生をお招きして「CAD合併心房細動患者に対する抗血栓療法のパラダイムシフト 〜AFIRE Studyの結果をふまえて〜」という演題名でご講演を賜りました。的場先生には、研究の背景となった抗血栓療法に関する最近の知見を紹介していただいた後に、AFIRE研究の研究デザインや結果、さらにはMEJM誌に掲載されるまでの裏話について、大変わかりやすく解説していただきました。特に「これまでの臨床研究の多くは“薬剤を増やす”ことに重点を置いていたのに対し、AFIRE研究は“薬剤を減らす”ことの意義を証明した研究です」という先生の言葉に強い感銘を受けました。ポリファーマシーの弊害が叫ばれている今だからこそ、我々かかりつけ医も改めて個々の患者さんの処方について考え直す必要がありそうです。
また今回は、会の後半をパネルディスカッション「CAD合併AF患者の抗血栓療法について考える」と題して的場先生を混じえてディスカッションを行い、私もパネリストとして参加させていただきました。私からは「慢性期 (12ヶ月以降) のCAD合併AF患者の抗血栓療法について考える 〜かかりつけ医の立場から〜」として幾つか問題提起をさせていただきました。我々としては、まず昨年公開された「安定冠動脈疾患の血行再建ガイドライン (2018年改訂版)」に掲載されている「図8 PCI後の抗血栓療法」を知っておくことが重要と思われます。

実はガイドラインはAFIRE研究の発表前に公開されていますが、「12ヶ月以降は抗凝固薬 (OAC) 単剤」というガイドラインの推奨が正しいことをAFIRE研究が証明したと言えます。ただし全ての症例をOAC単剤して良いのか、と言えばまだ心配な面もあるのが実情です。例としては、① 第一世代の薬剤溶出性ステント (DES) が留置されている症例や、② 左冠動脈主幹部にDESが留置されている症例、③ 虚血性脳卒中 (アテローム血栓性梗塞やラクナ梗塞) の既往がある症例、などが挙げられると思います。ただしこれらの症例はAFIRE研究の中にも少なからず含まれていますので、今後サブ解析の結果が明らかになればこれらの疑問も解決されるかもしれません。最終的に、抗血小板薬を中止して良いかどうかの判断はPCIやCABG (冠動脈バイパス術) を行った先生と十分な連携を取りながら行うべきでしょう。多くの症例はPCI・CABG施行後一定期間 (6〜12ヶ月) で冠動脈造影や冠動脈CTを行いますので、検査結果のやり取りの際に確認しておくのが良いかもしれません。
この日はあいにく複数の研究会と重なってしまったため、若干参加人数が少ない印象はありましたが、総合討論でも活発な意見が交わされ、大変有意義な会になったと思います。最後になりましたが、的場先生、本研究会の座長をしていただいた豊橋ハートセンターの寺島充康先生、同じくパネリストとして急性期の症例提示をしていただいた豊橋市民病院 循環器内科の成瀬賢伸先生に厚くお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。
 
 
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