2月以降は各種研究会が全て中止になったこともあり、「Doctor’s Topics」をしばらくお休みしてしまい申し訳ありませんでした。まだ研究会再開の目処は立っていませんが、最近はオンラインでの講演会も多くなり、特に新型コロナウイルス感染症に関する講演は時間の許す限り聴講するように心がけています。

さて本日は当院における院内感染対策についてお知らせしたいと思います。現時点で新型コロナウイルス感染症に関するガイドラインや手引きが複数の団体から出ています。厚生労働省・国立感染症研究所が中心となって作成された「新型コロナウイルス感染症 COVID-19 診療の手引き 第2版」や日本プライマリ・ケア連合学会が作成した「新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) 診療所・病院のプライマリ・ケア 初期診療の手引き version 2.0」、さらには日本環境感染学会が作成した「医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド 第2版」などがありますが、私は特に感染管理の観点から、国立国際医療センター 国際感染症センターが作成した「新型コロナウイルス感染症に対する感染管理」と日本医師会が作成した「新型コロナウイルス感染症 外来診療ガイド」を参考にして診療にあたっています。中でも日本医師会の診療ガイドは、感染症の概要についてはできるだけ簡潔にして、流行期に求められる感染対策や外来診療の実際に焦点を当ててわかりやすく解説しています。以下、診療ガイドの項目別に当院の取り組みを考えてみたいと思います。

 

A 症状のある患者と他の動線と時間を分離する  →  当院では構造的に一般の患者さんと症状のある患者さんの出入り口を分けることが困難なため、時間を分離する方法を選択しました。具体的には「かぜ・発熱患者専用外来」を平日の11:30 〜 12:00に設け、この時間帯では一般の患者さんの診療を原則としてお断りしています (ただしかぜ症状の患者さんがいなければ診療可)。その場合はオンライン診療や電話再診を利用していただくか、時間をずらして再受診していただくようにお願いしています。もし症状のある患者さんが複数いらっしゃる場合には自家用車内で待っていただき、1人の患者さんの診療 (会計を含む) が完全に終了してから新たに診療所内へご案内するようにしています。

ちなみに一般外来を受診される全ての方(付き添いの方も含む)にも体温測定をお願いし、症状の有無にかかわらずマスクを着用するようにお願いしています。

 

B 症状のある患者を診察する際の留意点  →  感染対策の基本は「標準予防策の徹底」ですので、当院では職員全員がサージカルマスクを着用しています。私自身は以前からマスクを着用していたのでそれほど苦にはなりませんが、夏場にはかなり暑苦しくなりそうです。手指消毒についてはアルコール消毒液を、診療所入口を含めた複数箇所に設置し、いつでも手指衛生が行えるように配慮しています。また洗面スペースには紫外線・熱風を併用した手指殺菌装置を新たに設置しましたので、適宜利用していただければと思います。

ただ現在もアルコールが不足しがちのため、環境消毒には金属部分を除いて0.1% 次亜塩素酸ナトリウム水溶液を使用しています。

なお一般の診察室とかぜ症状のある患者さんを診る診察室を分けるようにしました。特に後者にはクリーンパーティションを置き、空気の流れが一方向に向かうようにして飛沫やエアロゾルの飛散を防ぐように配慮しています。疑わしい症状の場合にはフェイスシールドと手袋を着用し、状況によってはガウンとキャップも着用することにしています。N95マスクも少ないながら装備していますが、当院では検体採取を行うことはないので、今のところ使用実績はありません。

 

C レントゲン撮影における留意点  →  レントゲン室は構造上窓がなく換気効率が悪いので、サーキュレーターを設置して効率を高めるようにしています。また症状のある患者さんについては、極力連続して使用しないように注意しています (診療ガイドでは30分以上の間隔を空けるように推奨しています)。

 

D 症状のある患者の診療後の環境消毒  →  「かぜ・発熱患者専用外来」終了後と午後の診察終了後には、必ずアルコールもしくは0.1% 次亜塩素酸ナトリウム水溶液で環境消毒を行うようにしています。特に「かぜ・発熱患者専用外来」終了後には窓を開けて室内の換気を行うとともに、空気清浄機や紫外線による空気滅菌装置を併用しています。なお待合室や処置室にある換気扇は24時間onの状態にしています。

 

E その他 (院内の整備と対策)  →  受付のカウンターは開口部を狭くして、ビニールシートのカバーを設置しました。また待合のレイアウトを変更するととともに、離れて座っていただくように座席間にポスターを貼っています (クマモン使用のポスター、なお熊本市役所には使用許可を取ってありますのでご安心下さい)。なお、今のところ雑誌類は定期的に紫外線滅菌装置で殺菌した上で設置を継続していますが、流行期に入った際には感染防御の観点から撤去する予定です。

 

新型コロナウイルス感染症についてはまだわからない点も多く、情報も日々更新されています。我々医療機関も試行錯誤しながら、少しでも患者さんが安心して診療を受けられるように努力していますので、必要以上に感染を恐れて定期受診を差し控えることのないようにお願いします。特に心臓病や糖尿病、高血圧、呼吸器疾患(喘息やCOPDなど)は新型コロナウイルス感染症重症化の危険因子と言われていますので、日頃からのコントロールが非常に重要です。オンライン受診や電話再診を利用する方法もありますので、もし心配な点がありましたら是非かかりつけ医までご相談下さい。

 

*追記:5/29付で「新型コロナウイルス感染症 外来診療ガイド」が、6/2付で「新型コロナウイルス感染症に対する感染管理」が、それぞれ改定されました。特に「新型コロナウイルス感染症 外来診療ガイド」は20ページから31ページへと大幅に内容も増加しています。「必ず電話してから受診するように周知すること」や「電話や情報通信機器を用いた診療 (いわゆるオンライン診療) 」などが新たに推奨されていますが、感染対策に関しては大きな変化はないようです。