12/8 (金) には「Type 1 Round Table Meeting」という少人数の会が開催され、「1型糖尿病医が伝えたい3つの事」という演題名で刈谷豊田総合病院内分泌・代謝内科の服部麗先生からご講演を賜りました。今回は1型糖尿病に関する会であったため、必ずしも一般の内科医向けの講演ではありませんでしたが、それでも今年一番ではないかと言える程、印象に強く残るご講演内容でした。その大きな理由の一つとして、服部先生ご自身が1型糖尿病患者であること、即ち患者側の目線と医療者の目線の両者を兼ね備えていること、が挙げられるのではないでしょうか。
先生は大学在学中に1型糖尿病を発症されており、まずご自身の経験を振り返りつつ、患者としての葛藤の日々を包み隠さずに教えていただきました。本来できるはずだったことが出来なくなるかもしれないと言う不安や失望から、一時期やけになっていた時期があったこと、特に研修医時代にはほとんど自己血糖やHbA1cを測定していなかったという事実には正直言って驚かされました。これほど医療知識を持った人でさえ自暴自棄になるのであれば、一般の方々が1型糖尿病になった場合にはどれほど不安でどれほど孤独であろうか、を考えさせるには十分なエピソードであったと思います。また、1型糖尿病患者さんの「過剰に心配されたりするのもいやだし、いちいち説明するのが面倒だから周囲の人に病気を告知しない」という心情も理解することができました。
そんな先生が患者会に参加した際に「アルマジロを救え」との講演を聞いて、まるで自分へのメッセージではないかと気付くところは本講演のハイライトであり、患者会を通じて「ひとりじゃないんだ」と感じることの重要性を改めて認識しました。そして先生からの3つのメッセージ、
・「患者」とは「病人」ではなく「仲間」である
・「インスリン」とは「治療」ではなく「生活」である
・「1型糖尿病」とは「病気」ではなく「人生」である
という言葉には深い感動を覚えました。先生は「インスリンを臨機応変に使いこなす能力」を「1型力」と名付け、この「1型力」を磨くことが患者にも医療者にも必要であり、それによって全ての1型糖尿病患者さんが幸せに暮らせるようにしたい、そんな先生の熱意を感じました。
本講演の中にはもちろん具体的な1型糖尿病の治療に関するお話もありましたが、何より先生から頂いたメッセージが強く心に残ったご講演でした。服部先生、本当にありがとうございました。次回は是非より多くの聴衆の前でご講演頂けることを願っています。