9/15 (木) は「穂の国Total Care Seminar」が豊橋ハートセンターで開催され、特別講演として「リポ蛋白レベルでは語れない脂質の代謝」という演題名で、大阪市立大学大学院医学研究科 血管病態制御学 准教授の庄司哲雄先生にご講演を賜りました。
脂質代謝の分野は、PCSK9阻害薬という新しいコレステロール治療薬が出て来たこともあり、再び注目を集めています。リポ蛋白は簡潔に言うとコレステロールや中性脂肪を運ぶ粒子で、大きさ (比重) によってVLDL (超低比重リポ蛋白)、LDL (低比重リポ蛋白)、HDL (高比重リポ蛋白) などに分けられます。まず先生は、復習を兼ねてリポ蛋白代謝について非常にわかりやすく解説していただきました。私はいろいろな研究会でリポ蛋白代謝の話を聞いてきましたが、庄司先生の説明が最も理解しやすく、かつコンパクトにまとまっていると感じました。また、わかりにくい高脂血症のタイプ分類 (I型〜V型) についても、頻度の低いI型、III型、V型を除いて簡易的に分類する方法を教えていただき、まさに目から鱗が落ちる思いでした。
次に先生はそれぞれの高脂血症に対する治療法について解説され、さらに治療を行う上でのガイドラインについても言及されました。一般的にガイドラインは、管理目標値を設定しそれを達成すべく治療を行うもの (Treat to Target方式) が一般的ですが、最近のガイドラインの中には、目標値を設定せずに治療を行うもの (Fire and Forget方式) があり、2013年に出されたアメリカの脂質治療ガイドライン (ACC/AHA Guideline) などがこれに当たります。どちらがよいかは議論があり一概に言えないと思いますが、今後は医療経済学的な側面も含めて考える必要があるのかもしれません。
最後に先生は、本題であるリポ蛋白レベルではない脂質代謝 = 脂肪酸代謝について、脂肪酸の分類や脂肪酸と心血管イベント (心筋梗塞や脳卒中など) との関連も含めて解説されました。EPA (エイコサペンタエン酸) やDHA (ドコサヘキサエン酸) はω-3系多価不飽和脂肪酸に分類され、大規模臨床試験による心血管イベント抑制のエビデンスが存在します。しかしスタチンなどに比べるとエビデンスが少ないこと、必ずしも有効性が示されない臨床試験が存在することも事実で、今後さらなるエビデンスの蓄積が必要だと感じました。
今回は庄司先生のおかげで、脂質代謝に関する自分の中の知識を整理するとともに新たな知識を得ることが出来ました。庄司先生、お忙しい中ご講演ありがとうございました。