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第6回豊橋ライブOMTコース

5/26 (木) に、第6回豊橋ライブ OMT (Optimal Medical Therapy) コースが開催され、今年も徳島大学循環器内科 佐田政隆教授と一緒にコース世話人を務めさせてさせていただきました。OMTコースは昨年同様豊橋内科医会との共催の形で開催され、かかりつけ医の先生方にも参加していただけるように配慮しました。
実は昨年のOMTコース終了後に、参加していただいたかかりつけ医の先生方を対象に、今後どのようなテーマの講演を聞きたいかのアンケートを行いました。その結果、特に多かったのが ①心不全の治療・管理、②抗不整脈薬の使用方法、③抗血小板薬と抗凝固薬の併用法、④アブレーションの適応・管理であり、今年はその中から①と③を選ばせていただきました。
第一部の心不全の治療・管理では、「心不全のトータルケア」という演題名で、豊橋ハートセンター循環器内科の吉本大祐先生にご講演をお願いしました。人口の高齢化に伴い、心不全患者は2030年には130万人まで増加すると言われており、対応が急がれる疾患の一つです。近年、豊橋ハートセンターでは心不全治療にも力を入れており、昨年からは心不全チームを結成して多職種 (医師、看護師、薬剤師、理学療法士等) での包括ケアを行っているそうです。吉川先生は、特にチームとして心不全を管理することの必要性や、心臓リハビリテーションの重要性、さらには栄養状態と心不全の関連について解説されました。今後は心不全患者さんの病診連携にも力を入れたいとのことですので、我々かかりつけ医側も積極的に患者さんの紹介・受け入れを行っていきたいと思います。
第二部の抗血小板薬と抗凝固薬の併用については、「NOACは冠動脈イベントを抑制するか?」という演題名で、九州大学病院循環器内科講師の的場哲哉先生にご講演いただきました。心房細動を持つ患者さんは、脳卒中予防のため抗凝固薬の内服が必要となる場合が多いのですが、もし虚血性心疾患(狭心症や心筋梗塞など)を合併すると、さらに抗血小板薬の追加内服が必要となります。的場先生は、過去の大規模臨床試験の結果から、抗凝固薬 (主にワルファリン) 単剤に比べて抗血小板薬1剤の追加で約2倍、抗血小板薬2剤の追加 (DAPT: Dual AntiPlatelet Therapy) で約3倍に出血イベントが増加することを教えていただきました。さらに先生は2014年に出されたヨーロッパ心臓病学会の合同文書にも触れられ、PCI後6ヶ月で抗血小板薬を2剤から1剤に減量し、さらにPCI後1年で抗凝固薬単剤 (ワルファリンあるいはNOAC) とするように推奨していることを解説されました。ヨーロッパに限らず、最近ではDAPTの期間をなるべく短縮し、抗凝固薬単剤でフォローしようとする方向のようです。ただし、すでにワルファリンに関しては冠動脈イベントの抑制効果が証明されていますが、NOACでは動物実験での動脈血栓を抑制するという報告があるものの、大規模臨床試験での結果が十分とは言えない状況です。現在NOACを使用した大規模臨床試験が複数進行中だそうですので、これらで良好な結果が得られれば、今後ワルファリンよりもNOACが推奨されるようになる可能性が高いと思われます。
今年のOMTコースも参加人数が40名を超え、盛況の中でコースを終えることができました。講師の先生方、ご参加いただいた先生方、そしてコースの運営にご協力いただいたスタッフの方々、本当にありがとうございました。

豊橋内科医会研修会

4/28 (木) の豊橋内科医会研修会は、「日常診療に潜む下垂体疾患」という演題名で、名古屋大学大学院医学系研究科 糖尿病・内分泌内科教授の有馬寛先生にご講演を賜りました。一口に下垂体疾患といっても、下垂体前葉から分泌されるホルモン (ACTH、TSH、GH、プロラクチンなど) と、下垂体後葉から分泌されるホルモン (ADH、オキシトシン) のそれぞれに異常をきたす疾患があるわけですから、大変複雑です。有馬先生には、それらの中の代表的な疾患について、症例を交えてわかりやすく解説していただきました。
まずGH (成長ホルモン) による異常として、先端巨大症について解説していただいたのですが、心臓の機能が低下して心不全や不整脈を繰り返していた患者さんが、先端巨大症の診断を受け治療を開始したところ、心機能が著明に改善したという症例は、大変興味深く拝聴しました。心筋の肥大化や間質の繊維化があっても、ある程度までなら改善するということでしょう。先端巨大症は、糖尿病や高血圧、脂質異常症、睡眠時無呼吸症候群との合併も多いとのことですので、鑑別すべき疾患の一つとして、その特徴的な顔貌とともに頭の中に入れておくべきだと感じました。
さらに先生は、ACTHの異常としてのクッシング病や、ADH (抗利尿ホルモン:バソプレッシン) の異常としての中枢性尿崩症やSIADH (抗利尿ホルモン不適合分泌症候群) についても解説されました。その際に低ナトリウム血症について話があったのですが、余談として、マラソン時にも水分の過剰摂取による低ナトリウム血症が起きることがあると教えていただきました。我々はマラソンというと、脱水による体調不良や熱中症が真っ先に頭に浮かびますが、ある研究によると、マラソンをゴールした後に、スタート前に比べて3〜5kg体重が増加している人が以外に多いそうです。そういった際に、極端な低ナトリウム血症になっている場合があるのですが、命に関わるような危険な状況に陥ることもあるそうです。必要以上の水分摂取は、たとえそれがスポーツ飲料であっても低ナトリウム血症をきたすことがある (スポーツ飲料ではナトリウム含有量が足りないということでしょう) ことを覚えておく必要があり、我々も市民ランナーに対して注意喚起をしていく必要がありそうです。
有馬先生は大学の1年先輩で、大学病院でも数年間ご一緒させていただきました。講演の後にはご挨拶や質問もできて、大変有意義な講演会でした。有馬先生、ありがとうございました。
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