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東三学術講演会

一昨日 (7/29) は東三学術講演会が行われました。今回の講演会は、4/1に開催された「東三医学会糖尿病勉強会」の第二回にあたるものです。諸事情により「糖尿病勉強会」という名称は用いないことになりましたが、その趣旨は第一回と全く変わっておらず、各医療機関の糖尿病診療力を高め、糖尿病患者さんが安全で質の高い糖尿病診療を受けられるようにすることを目的としています。
今回は「糖尿病の食事療法と指導」をテーマに、地元の糖尿病専門医の先生方に日頃どのような食事指導を行っているかを講演していただきました。

講演1「当院の栄養指導の実際 ~カーボカウントも含めて~ 」
    
杢野医院 杢野武彦 先生
講演2「診療所における栄養指導の工夫」
かわいクリニック 河合泰典 先生
講演3「糖尿病の食事療法 最近の話題」
豊橋市民病院 山守育雄 先生

まず杢野先生は、食品交換表を利用しつつ、炭水化物を50%、55%、60%にしたときの指導について説明していただきました。さらに先生は、1型糖尿病の患者さんを数多く診療していることもあり、カーボカウントについて基礎カーボカウント・応用カーボカウントに分けて教えていただきました。
次に河合先生は、いくら食事指導を行っても患者さんの意識が変わらなければ効果は期待できないため、如何に患者さんの意識を改革し行動変容をおこすかについて、ユーモアを交えながら講演していただきました。
最後に山守先生は、食事療法は糖尿病治療の要であることを強調されつつ、最近の話題である「糖質制限食」との正しいつきあい方や、SGLT2阻害薬処方時の食事療法について講演していただきました。
同じテーマを専門医3名で講演していただいたため、当初は内容が被るのではないかと思っていましたが、その心配は杞憂であり、まさに三人三様の切り口で非常に興味深く聴講しました。私が個人的に印象に残ったのは、杢野先生も河合先生も食事指導を栄養士に委ねるのではなく、ご自身でされているということでした。栄養士がいないから食事指導が出来ないというのは言い訳にすぎないということを痛感したので、もう一度食品交換表から勉強し直さなければ、と思っています。

MERS対策講演会

7/18 (土) に、MERS(中東呼吸器症候群)対策講演会が豊橋市医師会の主催で行われました。連休前の土曜日の午後にも関わらず、80名近い医療関係者の方が参加され、この疾患に対する関心の高さを伺わせました。
講師は、この分野で世界的にも大変ご高名な東北大学・微生物分野の押谷仁教授でした。講演では「新興感染症の現状と日本国内での課題」という演題名で、MERSだけでなく、昨年国内感染例が認められたデング熱や、西アフリカで多くの死者を出したエボラウイルス病(最近ではエボラ出血熱と呼ばないことが多いようです)についてもお話をいただきました。
講演の中で先生は、マニュアルだけでは対応できないことがあるとされ、「想定外」の事態が起きた際に、どれだけ適切な対応ができるかが重要だと強調されました。そしてそのためには、適切なリスクアセスメントが不可欠であることを、リスクマトリックスという表(流行が起きる可能性を横軸に、起きた場合のインパクトを縦軸に置き、リスクの評価を行うもの)を用いて説明されました。
具体的には、エボラウイルス病の場合、日本に波及する可能性は (1+) (地理的にも可能性は低い) で、日本で起きた場合のインパクトも (1+) (仮に日本で発生しても大規模な流行になる可能性はほとんどない) とそれほどリスクが高くないのに対し、MERSの場合は、日本に波及する可能性は (2+) (日本でも感染の起こる可能性あり) で、日本で起きた場合のインパクトも (2+) (数人〜数十人の規模の流行が起こりうる) と、エボラウイルス病よりもややリスクが高いことを示されました。
最後に先生は、リスクマネジメントの観点から、国・地域レベルで早急に体制を整備する必要があることを強調されました。実際に感染症が起こるのは地域であるため、地域レベルでこそ適切なアセスメントおよび初期対応が行われる必要があります。しかしその一方で、地域には感染症の知識を持った専門家が少ないという現実があります。医療関係者だけでなく、行政と連携してこの問題に早急に取り組んで行く必要があると強く感じました。
グローバル化の進展とともに新興感染症のリスクは増大しており、日本だけが安全ということはあり得ないということを実感した90分でした。
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