年齢や持病の有無により
目標値は変わる
先ほど、年齢に関わらず高血圧の基準は同じである、という話をしました。ですから80歳の人でも、30歳の人でも、収縮期血圧が140mmHg以上なら高血圧であると言えます。
ただし、年齢や持病の有無によって、どのくらいまで血圧を下げたらよいのか、という目標(降圧目標)は変わってきます。
今回のガイドライン改定では、2015年に発表されたSPRINT試験という大規模臨床試験の結果から、目標血圧がより低く(厳しく)設定されるようになりました。
例えば75歳未満の成人やほとんどの脳血管障害患者、冠動脈疾患患者、慢性腎臓病患者(尿蛋白陽性)、糖尿病患者、抗血栓薬服用中のかたでは130/80mmHg未満を目標とするように記載されています。一方で75歳以上の高齢者や一部の脳血管障害患者、尿蛋白陰性の慢性腎臓病患者では140/90mmHg未満を目標としています。(下図参照)
年齢や持病別 降圧目標値
診察室血圧(mmHg) | 家庭血圧(mmHg) | |
---|---|---|
75歳未満の成人※1 脳血管障害患者 (両側頸動脈狭窄や脳主幹動脈閉塞なし) 冠動脈疾患患者 CKD患者(蛋白尿陽性)※2 糖尿病患者 抗血栓薬服用中 |
130/80mmHg未満 | 125/75mmHg未満 |
75歳以上の高齢者※3 脳血管障害患者 (両側頸動脈狭窄や脳主幹動脈閉塞あり、または未評価) CKD患者(蛋白尿陽性)※2 |
140/90mmHg未満 | 135/85mmHg未満 |
※1 未治療で診察室血圧130-139/80-89mmHgの場合は、低・中等リスク患者では生活習慣の修正を開始または強化し、高リスク患者ではおおむね1ヵ月以上の生活習慣修正にて降圧しなければ、降圧薬治療の開始を含めて、最終的に130/80mmHg未満を目指す。すでに降圧薬治療中で
130-139/80-89mmHgの場合は、低・中等リスク患者では生活習慣の修正を強化し、高リスク患者では降圧治療薬の強化を含めて、最終的に130/80mmHg未満を目指す。
※2 随時尿で0.15g/gCr以上を蛋白尿陽性とする。
※3 併存疾患などによって一般に降圧目標が130/80mmHg未満とされる場合、75歳以上でも忍容性があれば個別に判断して130/80mmHg未満を目指す。
降圧目標を達成する過程ならびに達成後も過降圧の危険性に注意する。過降圧は、到達血圧のレベルだけでなく、降圧幅や降圧速度、個人の病態によっても異なるので個別に判断する。
高血圧治療の目的は、血圧を下げることそのものではなく、心臓肥大や動脈硬化と、それらの結果として起こる冠動脈疾患や脳血管疾患を防ぐことです。降圧目標に従って治療することで、これらの病気を未然に防いだり、あるいは再発を防いだりすることが可能になるのです。