豊橋内科医会|松井医院|豊橋市の内科・循環器内科

愛知県豊橋市草間町東山93-1

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豊橋内科医会

10月は大阪や東京への出張に加え自分自身の講演の準備も必要だったため、“ドクターズトピックス”への掲載をお休みしてしまいました。今月は何とかアップしようと思いパソコンに向かっています。
11/9 (木) の豊橋内科医会は「EBMとNBMを考慮した糖尿病治療戦略 〜患者満足度を意識した医師・薬剤師の連携〜 」という演題名で、医療法人白石内科医院 院長/大阪大学内分泌・代謝内科学 特任講師の白石俊彦先生からご講演を賜りました。EBM (Evidence-based Medicine) という言葉はよく耳にしますが、NBM (Narrative-based Medicine) はあまり聞き慣れない言葉かもしれません。「Narrative」は「物語」と訳され、「NBM」は直訳すれば「物語に基づいた医療」ということになるでしょうか。患者さんが対話を通じて語る、病気になった理由や経緯、病気についていまどのように考えているかなどの「物語」から,病気の背景や人間関係を理解し、患者の抱えている問題に対して全人的 (身体的、心理的、社会的) にアプローチしていこうとする臨床手法がNBMであり、最近ではEBM一辺倒ではなく、EBMとNBMのバランスがとれた診療を行うことが求められつつあります。白石先生は、糖尿病の治療ではまず「傾聴」が重要であると述べられ、実際に先生のクリニックでは医師の診察の前に必ず栄養士・看護師・薬剤師からなる「チーム」が介入し、特に ① HbA1cが前月に比べ0.3以上上昇した場合や、② 上昇が0.3%未満でも2ヶ月以上連続して上昇した場合には、コントロールが悪化した原因がどこにあるかの聞き取り (スクリーニング) を詳しく行うそうです。その結果として男性ではアルコールが、女性では果物と餅が悪化の原因として重要であり、特に秋、冬にかけてコントロール悪化する傾向が強かったとのことです。そのため先生のクリニックでは、悪化する時期の2ヶ月前からポスター掲示や配布資料を通じて先回り指導を行ったり、待合室に掲示する資料を工夫 (食品にどのくらいの糖分が含まれているか角砂糖を使って示すなど) をして、啓発に努めているそうです。
白石先生はまた、服薬遵守率を高めるための様々な工夫 (錠数を減らす、配合錠を使用する、昼の服用をなくすなど) を行い、さらには薬剤師との連携を図ることで良質で長続きする糖尿病治療を目指しているとのことでした。実際に薬剤中断率の低下は治療満足度の上昇と、血糖コントロールの改善は服薬遵守率の向上と相関していることがクリニックのアンケートから示されており、患者さんのlife styleに合わせた治療を医師と患者さんの両者で考えていくことが非常に重要であるという結果でした。
上記の事柄は、文章にしてしまえば当たり前のことかも知れませんが、実践しようとなるとなかなか大変です。白石先生のお話の中で特に印象的だったのは、クリニックに管理栄養士が10名も勤めていらっしゃるという点でした。先生がいかにNBMおよびチーム医療を重視されているかがわかるポイントであり、なかなか他院では真似できない取り組みだと実感しました。白石先生、診療が大変お忙しい中豊橋までお越し頂き大変ありがとうございました。先生の益々のご活躍を祈念しております。