6/20 (木) に、第7回豊橋ライブ OMT (Optimal Medical Therapy) コースが開催され、例年通り徳島大学循環器内科 佐田政隆教授と一緒にコース世話人を務めさせていただきました。OMTコースが豊橋内科医会との共催で開催されるようになってから今年で5年目を迎え、毎年40名前後の先生に参加していただけるようになっています。
まず第一部では「弁膜症はどこまでカテーテル治療で治せるか」という演題名で、豊橋ハートセンター循環器内科医長の山本真功先生にご講演を賜りました。やや刺激的なこのタイトルは、TAVI (経カテーテル大動脈弁植込術) に加えてMitraClip (経皮的僧帽弁形成術)も保険での診療が可能となった現状を、広くかかりつけ医の先生に紹介していただくために私からお願いしたものです。先生はまず井上バルーンによるPTMC (経皮的僧帽弁交連裂開術) から紹介され、ついでTAVIへと話を進められました。TAVIに関する多くの大規模臨床試験の結果からその有効性と安全性が明らかになるにつれて、その適応も徐々に広がりつつあります。山本先生ご自身はすでに600例を超える症例実績があるとのことですので、日本でも有数の症例数ではないでしょうか。またMitraClipに関してもすでに豊橋ハートセンターで開始されており、海外の大規模臨床試験の結果からもかなり期待が持てそうです。最後のスライドで、山本先生は「弁膜症はどこまでカテーテル治療で治せるか」という問いに対し、「全部!」と答えられた後に「だったらいいなあ〜」と付け加えられて講演を終了されました。今後この分野が益々発展し、先生の希望が叶うことを循環器診療に携わる者として願っています。
第二部では佐田教授自らご登壇いただき、「油博士が語る!食べて健康スーパーオイル 〜これで患者も先生も健康長寿〜」という演題名でご講演を拝聴することができました。佐田先生にはOMTコースの前身である長期予後改善コースの頃に一度ご講演いただいたことがありますが、その後はずっと座長席に留まっておられました。今回は「佐田先生の話を聞きたい」という多くの先生の希望を受けて、満を持しての登場となりました。先生のお話は決して簡単な内容ばかりではないのですが、疫学研究と介入試験、さらにはご自身が行った基礎および臨床研究の結果を上手にまとめられて話をされるため、大変理解しやすく興味の尽きない講演となりました。n-3 (ω-3)系多価不飽和脂肪酸、中でもEPAは大規模臨床試験の結果からスタチンの残余リスクを減らし得る貴重な一手となる可能性があります。佐田先生は、EPAには接着因子の抑制や病的な血管新生の抑制、さらにはMMP-1の発現抑制によるプラークの安定化や血小板機能の改善等、多くの抗動脈硬化作用があることを基礎実験の結果から示されました。またEPA単独が良いかEPA+DHAが良いかについても、ご自身の研究結果からはっきりとした見解を述べられていたのが印象的でした。n-3系多価不飽和脂肪酸は食品から積極的に摂取することが望まれますし、薬剤としてもさらなるエビデンスの蓄積が期待できそうで、動脈硬化予防の分野に大きな希望を抱かせる講演内容でした。佐田先生は「油博士」として様々なテレビ番組にも紹介されていますが、「油」に限らず動脈硬化研究において日本の第一人者の先生ですので、これからも是非定期的にご講演いただければと思います。
おかげさまで今回のOMTコースも盛況のうちに会を終えることができました。ご講演いただいた佐田先生、山本先生、ご参加いただいた先生方、そしてコースの運営にご協力いただいたスタッフの方々、本当にありがとうございました。