マイコプラズマ感染時の抗菌薬治療について|松井医院|豊橋市の内科・循環器内科

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マイコプラズマ感染時の抗菌薬治療について

 現在流行しているマイコプラズマ肺炎 (気管支炎) は、マイコプラズマという細菌が原因の感染症です。マイコプラズマ肺炎は、一般的な肺炎と異なり、学童期から成人に多く見られ、高齢者には少ないという特徴があります。ほとんどが軽症で自然治癒することもありますが、ごく稀に重症化する場合もあります。
以前は「オリンピック肺炎」と呼ばれ、オリンピック開催年に定期的な流行がみられましたが、最近ではその傾向が薄れています。ただ現在の流行は、最後に流行した2016年を超える規模となっています。
 マイコプラズマは細胞壁を持たない特殊な構造を有するため、細胞壁を壊して細菌を殺す抗菌薬 (ペニシリン系抗菌薬やセフェム系抗菌薬などのβ-ラクタム系抗菌薬) が効きません。効果的な抗菌薬としては、細菌が生存するのに必要な蛋白質を作る仕組みを妨害する抗菌薬 (クラリスロマイシンやアジスロマイシンといったマクロライド系抗菌薬やミノサイクリンなどのテトラサイクリン系抗菌薬) や、DNAを複製する仕組みを妨害する抗菌薬 (トスフロキサシンやレボフロキサシンといったキノロン系抗菌薬) が挙げられます。
 注意すべき点として、マクロライド耐性菌がアジアを中心に拡大しており、中国では90%以上、韓国では80%以上がマクロライド耐性を示しています、日本においては、2012年頃には80~90%がマクロライド耐性を示していましたが、2010年代後半から耐性率は減少し、2018~2020年の耐性率は30%台以下まで低下しています。ただし耐性率には地域差が見られ、一部の地域では、2024年時点で60%以上が耐性を示しています。
 もっとも、耐性菌の増加にもかかわらず現在もマクロライド系抗菌薬が第一選択とされています。その理由としては、① マクロライド耐性だからといって重症化しやすいわけではないこと、② 耐性菌であってもマクロライドが全く効かないわけではないこと、③ マクロライド以外の抗菌薬への耐性菌を増やす懸念があること、④ テトラサイクリン系やキノロン系抗菌薬には子どもに対する副作用の懸念があること、などが挙げられます。なお、マクロライド系抗菌薬を使用しても48~72時間以内に解熱が見られない場合は、抗菌薬の変更を検討するように推奨されています。もしマイコプラズマ感染症が強く疑われ (あるいは診断が確定し) マクロライド系抗菌薬を処方されたにもかかわらず、3日経っても症状が改善しない場合は、かかりつけ医に相談すると良いでしょう。