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第2回高血圧診療マスタークラス講習会

年末年始のためか、12月下旬から1月中旬にかけて研究会の開催も少なくなっていましたが、1月下旬からは普段通り週1〜2回の割合で研究会や講習会に参加しています。そんな中、2/17 (日) には「第2回高血圧診療マスタークラス講習会」が東京で開催され、私も出席してきました。以前にもお伝えしましたが、この講習会は高血圧診療に関する標準的な知識や最新情報を提供するために日本高血圧学会が主催しています。第1回は昨年7月に行われ、前半の4講座はすでに修了していましたが、今回は後半4講座を聴講し、無事全8講座を修了することが出来ました。
今年は5年に1回の高血圧ガイドライン改定年に当たっているため、講習会でも新ガイドラインの詳しい話が聞けるのではないかと期待していましたが、4/19の正式発表までは詳細を公表することは出来ないそうで、若干肩透かしを食った感じでした。とは言え、今回のプログラムも「診療のポイント〜お勧めの検査とその読み方〜」、「最新診療 (遠隔診療、遺伝子診療、腎除神経について) 」、「合併症のある高血圧と高齢者高血圧診療の極意」、「挙児希望、妊娠、授乳、閉経期の女性が来院したら」と盛り沢山で、高血圧診療に関する知識のブラッシュアップに大変役立ちました。個人的には旭川医科大学 循環・呼吸・神経病態内科学教授の長谷部直幸先生(長谷部先生は昨年の日本高血圧学会総会の会長を務められた重鎮です)がお話しされた「合併症のある高血圧と高齢者高血圧診療の極意」の講座が特に印象に残りました。先生お得意の川柳を交えながらのご講演はいつもながら大変面白く、かつ役立つ知識が満載でした。例えばSPRINT試験で行われたAOBP (自動診察室血圧測定) という方法と、我々が普段診察室で行なっている血圧測定ではどのくらい値が異なるのかを実際に調べられ、診察室血圧の方が10/4mmHg高いことを教えていただきました。このことはSPRINT試験で推奨されている120/80mmHgという血圧値を普段の診療に当てはめると130/84mmHgに相当することを意味します。それ以外にも、高血圧がI度、II度、III度と進展するにつれて心血管疾患のリスクが3倍、6倍、9倍と上昇することや、CKD (慢性腎臓病) では血圧を130/80mmHg未満に下げるとその進展抑制が期待できること、ACCORD-BP試験のpost-hoc解析から糖尿病患者でも積極的降圧治療の有効性が期待できること、など明日からの診療にすぐに利用したい内容ばかりでした。
全8講座を修了すると「講習会修了証」が頂けるそうなのですが、有効期間は4年間とのことです。さらに更新をするためには、今後も日本高血圧学会総会や臨床高血圧フォーラムに定期的に参加することが求められます。引き続き最新の情報を得て最良の高血圧治療が出来るように努めたいと思います。

豊橋循環器疾患研究会

10/30 (火) には豊橋循環器疾患研究会が開催されました。この会には「循環器疾患」という名称がついていますが、主に循環器内科を専門とするかかりつけ医が集まって、糖尿病治療について勉強するために企画されたものです。今回は「2型糖尿病治療の薬物療法:第一選択薬は?」という演題名で朝日生命成人病研究所附属病院 糖尿病内科治験部長の大西由希子先生からご講演を賜りました。大西先生はもちろん糖尿病専門医としても非常にご高名なのですが、同時に3人のお子さんを育てながら臨床の第一線で活躍されているということで、糖尿病学会のホームページ上 (女性糖尿病医サポートの取り組み) で紹介されたり、様々なマスコミにも登場されるなど大変ご活躍中の先生です。
まずご講演では、我々が日常よく遭遇するような代表的な症例を3例 (① メタボリックシンドローム合併患者、② 独居高齢患者、③ 著しい高血糖患者) 挙げられ、それぞれの症例にどのような薬剤を選択すれば良いかを、最新のエビデンスを交えながら大変わかりやすく解説していただきました。
ご講演を拝聴した後には、discussionの時間を30分ほど設けていただきました。かかりつけ医の先生には事前にアンケートを取らせていただき (① 糖尿病治療を行っている患者さんの中で心血管イベントの既往歴を有する患者さんは何%程度か、② 糖尿病治療における薬剤選択の際に特に重要視している点は何か、③ 実際に第一選択薬として最も使用している薬剤は何か)、そのアンケート結果を基にしてdiscussionを進めたのですが、我々だけでは心もとないため、糖尿病専門医である杢野武彦先生にも研究会に参加していただきました。その結果、我々が普段疑問に思っている点や治療に関して迷っている点について大西、杢野両先生からコメントをいただくことができ、大変充実したdiscussionになったと思います。
大西先生とは会が始まる前の雑談の中で、普段の仕事内容からお互いの子育てのことまで楽しくお話をさせていただきました。先生のますますのご活躍を祈念しております。

JAPAN CARDIOLOGY CLINIC Network

1ヶ月ほど前になりますが、心臓病学会学術集会の開催に合わせた9/8 (土) に「JAPAN CARDIOLOGY CLINIC Network」の懇親会が大阪で開催され、私も参加してきました。本会は、日本全国で地域医療を支えている循環器クリニックの情報交換やネットワーク作りの場として企画され、「医療法人社団ゆみの」の弓野大先生と「大西内科ハートクリニック」の大西勝也先生が発起人となって今回実現したものです。当日は全国各地から約30名の先生が集まり、様々な話題で盛り上がりました。長い間大学病院や地域の基幹病院で循環器専門医として活躍されていた先生が多く、クリニックを継承するために実家に戻られたり、あるいは地域の循環器診療を担うために開業されたという経緯が数多く聞かれました。お互いBackgroundが近いせいか話も合いやすく、地域の循環器診療のレベルをどう保っていくか、今後爆発的に増加するであろう心不全患者さんの在宅管理をどのように行っていくか、など活発な意見交換を行うことが出来ました。今後は循環器学会や心臓病学会の日程に合わせて継続して懇親会を開催していく予定とのことでした。次回以降も可能な限り参加させていただき、全国の循環器クリニックのネットワーク構築に微力ながら協力したいと思います。

高血圧診療マスタークラス講習会

少し前になりますが、7/29 (日)に「第1回高血圧診療マスタークラス講習会」が東京で開催され、私も参加してきました。この講習会は日本高血圧学会が主催するもので、高血圧診療に関する標準的な知識や最新情報を提供するための試みとして、初めて開催されました。第1回の定員は100名で、比較的少人数の参加者を対象に、9:30から昼食休憩を挟んで16:40まで (!) みっちり講習が組まれていました。必ずしも高血圧診療を専門にしない医師も対象となっていたため、参加者の構成としては約半数が高血圧学会の会員、残りの半数が非会員だったようです。
肝心の内容は、専門外の先生も対象にしているとはいえなかなか濃密で、私自身としては高血圧診療に関する知識のブラッシュアップに大変役立ちました。実際のプログラムは「知っていると得する疫学と分類・評価・目標」、「これだけは押さえたい降圧薬療法の実際」、「二次性高血圧、治療抵抗性高血圧をどうするか?」、「患者を惹きつける生活習慣指導 (減塩と運動のコツ)」の4部構成で、それぞれが90分間の講義形式でした。講師陣はご高名な先生方ばかりでしたが、少人数の講習会だったこともあり比較的和やかな雰囲気の中で行われたという印象です。個人的には東京女子医科大学 高血圧・内分泌内科学教授の市原淳弘先生が話された二次性高血圧のご講演が大変役立ちました。私も比較的年齢の若い高血圧患者さんが初診で来られた際には、念のため二次性高血圧のスクリーニング検査を行うことが多いのですが、原発性アルドステロン症の検査の中でアルドステロン/レニン比 (ARR)>200かつアルドステロン濃度≧170の場合にはアルドステロン産生副腎腺腫 (手術が可能) である可能性が高いことを教えていただきました。また褐色細胞腫のスクリーニング検査では、血漿フリーメタネフリンが最も優れているにも関わらず残念ながら保険未収載のため行えないこと、現時点では随時尿メタネフリン・ノルメタネフリンがbetterであること (ただしクレアチニン補正が必要) なども新しい知識として吸収することができました。
今後マスタークラス講習会は2回/年ずつ行われる予定のようです。今回は前半の4講座が終了しましたが、来年2月開催予定の第2回講習会で後半の4講座を全て受講すると講習会修了証を申請できるとのことです。ちなみに残りの4講座とは「診療のポイント〜お勧めの検査とその読み方〜」、「合併症のある高血圧と高齢者高血圧診療の極意」、「挙児希望、妊娠、授乳、閉経期の女性が来院したら・・・」、「最新診療 (遠隔診療、遺伝子診療、腎除神経、サプリメントについて)」だそうです。いずれも興味深いタイトルばかりですので、今から来年2月の予定を空けておく必要がありそうです。

病診連携漢方講演会

5/17 (木)には豊橋ハートセンター病診連携漢方講演会が開催され、「循環器領域で役立つ漢方治療」という演題名で東邦大学医療センター大森病院の戸田幹人先生にご講演いただきました。
循環器診療ではエビデンスに基づいて治療戦略を立てることが多いため(いわゆる欧米型の治療です)、漢方とは縁遠い領域のように思われていますが、今回の講演会はその循環器領域の漢方治療に焦点を当てている点が非常におもしろいと感じました。さらに、その講演会を主催したのがインターベンション治療で全国有数の医療機関であり、漢方治療とは対局に位置する医療機関であると思われがちな豊橋ハートセンターであるという点もまた興味深いところです。
神戸大学の岩田健太郎先生や神戸海星病院の北村順先生は、循環器診療における漢方の役割を「通常の治療では埋められない隙間を埋め、患者さんの満足度を上げること」と述べていますが、今回の戸田先生のご講演も、患者さんの諸症状を軽減するためにはどの漢方薬を用いたら良いかという実践に即した内容でした。戸田先生は、自ら漢方薬の服用により体調が著しく改善した体験から話を始められ、その後で様々な病態に効果的な漢方薬を数多く教えていただきました。もちろん漢方薬を効果的に効かせるためには「証」を正しく判断することや「気血水」の概念をきちんと取り入れることが重要だと思いますが、戸田先生は漢方診療に詳しくない我々でも理解しやすいように、極力難しい理論は抜きにして解説していただきました。例えば、同じ低血圧という病態でも、冷え性でめまいや心悸亢進がある場合は苓桂朮甘湯 (りょうけいじゅつかんとう) が良く、体力が低下している場合は補剤である補中益気湯 (ほちゅうえっきとう) が良い、といった具合です。戸田先生が推奨された処方の中で個人的に私が試してみたいと思ったのは、心筋梗塞後の諸症状に対する柴胡加竜骨牡蛎湯 (さいこかりゅうこつぼれいとう) 、下肢の冷えに対する当帰四逆加呉茱萸生姜湯 (とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう) 、慢性下肢虚血に対する黄耆建中湯 (おうぎけんちゅうとう) といったところでしょうか。既存の治療だけでは十分に抑えられない症状に対し、漢方薬を使用することで少しでも改善されるのであれば是非積極的に使用してみたいと感じた1時間でした。戸田先生、そして今回の講演会を企画して下さった豊橋ハートセンターの松原徹夫先生、大変ありがとうございました。
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