高血圧や糖尿病の治療なら豊橋市の松井医院へ

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アクセスミーティング

製薬メーカーのMRさんに聞くと、豊橋は全国的にみても研究会や勉強会が盛んな地域だそうです。もちろん、駅に隣接したホテルの会場で100名近くの先生方が参加する大きな研究会もありますが、中にはかかりつけ医同士で行うこじんまりした勉強会もあります。今週はそういった勉強会の一つである「アクセスミーティング」に参加してきました。この勉強会では、当番の先生が自分の専門分野 (得意分野) を生かしてプレゼンテーションを行うことになっていますが、それぞれの先生の専門性を理解して診診連携 (診療所同士の連携) に役立てようというねらいもあります。今回は、白井メディカルクリニックの白井健之助先生が「潰瘍性大腸炎を日常診療で診よう」という演題名で講演されました。潰瘍性大腸炎といえば厚生労働省の「指定難病」にも挙げられている疾患で、我々かかりつけ医にはなじみが薄い疾患のように感じますが、近年急激に患者数が増加しており「指定難病」の中では最も患者数が多いそうです。白井先生は消化器内科 (中でも消化管) がご専門ということもあり、現在30名以上の患者さんをクリニックで診られているそうです。白井先生は講演の中で、潰瘍性大腸炎の症状から診断・治療に至るまで大変わかりやすく解説されました。この疾患の正確な診断のためには大腸ファイバー検査や組織の病理所見が必要になるなど専門医以外で行うことは難しいのが実情ですが、1ヶ月以上下痢が続く場合で、特に血便を伴う際にはこの疾患を年頭に置いて大腸ファイバー検査を勧める必要があることを教えていただきました。また治療には5-ASA製剤が基本となり、さらにコントロールが困難な場合にはステロイドや免疫抑制剤を併用するのですが、かかりつけ医としてどこまで治療を行えばよいのか、さらには治療の目標をどこに置いたら良いのかなど、かなり突っ込んだ内容まで教えていただき、この疾患に対する理解が格段に進んだ気がします。また白井先生はスライドにもいろいろ工夫をこらして、我々が興味を持ち続けられるようにプレゼンテーションを行っていただきました。白井先生、本当にありがとうございました。

動脈硬化性疾患予防ガイドライン

今回は趣向を変えて「動脈硬化性疾患予防ガイドライン」を取り上げてみたいと思います。ご存知の方も多いかと思いますが、6月30日に5年ぶりの改訂となる「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版」が発行されました。このガイドラインは、私たちが今後約5年間にわたって脂質異常症の治療を行う際の指標となる、大変重要なものです。今回の主な改定点は5つほど挙げられていますが、実際の治療を行う上で特に重要な点は「絶対リスク評価方法の変更」と「高リスク例での再発予防の管理目標値の新設」の2点だと思います。
2012年版のガイドラインでは、NIPPONDATA80という研究のデータを元にリスク評価チャートが作成されていましたが、評価の際にLDLコレステロールではなく総コレステロールを用いる点や、リスク評価が心血管疾患の死亡率で示されている点など、現状にそぐわない点も幾つかありました。今回の改訂では吹田研究の「吹田スコア」が採用され、リスク評価も心血管疾患の発症率に変更となりました。吹田スコアは、① 年齢、② 性別、③ 喫煙、④ 血圧、⑤ HDLコレステロール、⑥ LDLコレステロール、⑦ 耐糖能異常、⑧ 早発性冠動脈疾患の家族歴、の8項目の合計点で求められますが、その得点に基づいて低リスク、中リスク、高リスクの3つのリスク区分に分類し、それぞれの区分ごとに脂質管理の目標値を定めています。吹田スコアの算出方法については、ホームページ内の「動脈硬化について」の欄に掲載しておきましたのでご参照いただければ幸いです。
また2012年版のガイドラインでは、高リスク状態であってもLDLコレステロールの管理目標値は「100mg/dL未満」までに留まっていました。しかし近年の大規模臨床試験の結果から、家族性高コレステロール血症や急性冠症候群を合併する場合では、より厳格な「70mg/dL未満」へのコントロールを考慮するという項目が新設されました。これは昨今の「the lower, the better」の考えに基づいていると思われます。
上記ポイント以外にも、家族性高コレステロール血症に関する記載の拡充や、新しいコレステロール低下薬であるPCSK9阻害薬やMTP阻害薬に関しての記載が新たに加わるなど、押さえておきたい箇所がまだまだたくさんあります。しっかりと把握した上で、今後の脂質異常症患者さんの管理に役立てていきたいと考えています。

日本循環器学会東海地方会

7/1 (土) は日本循環器学会東海地方会が名古屋で開催され、私も午前中の診療を終えてから参加してきました。通常の地方会では、各トピック別に別れた会場で一般演題を聴講することが多いのですが、今回は特に「医療安全・医療倫理に関する講演会」(DVDセッション) と「サテライト教育講演」を中心に聴講しました。
「医療安全・医療倫理に関する講演会」の単位は循環器専門医の更新に必須であり、5年間に最低1回は受けなければなりません。私はこの春に専門医資格を更新したばかりですが、早速2時間のDVDセッションを受講しました。もちろん必須の単位だからという面もありますが、こうやって改めて医療安全や医療倫理に関する意識を高めることも必要だなと感じながら聴講しました。
また今回の「サテライト教育講演」の講師陣は非常に豪華な顔ぶれでした。まず「最近のB型解離の治療方針」という演題名で社会医療法人大道会 森之宮病院 心臓血管外科部長の加藤雅明先生からご講演を頂いた後に、「わが国における心臓移植と補助人工心臓の現状と展望」という演題名で東京大学大学院医学系研究科 心臓外科学教授の小野稔先生からご講演を頂き、最後に「TAVRの現状と展望」という演題名で大阪大学大学院医学系研究科 心臓血管外科学教授の澤芳樹先生よりご講演を頂きました。加藤先生は大動脈ステントグラフト内挿術の世界的なエキスパートの一人ですが、今回は特にB型大動脈解離後のTEVAR (胸部大動脈ステントグラフト内挿術)治療について、最新の知見を解説していただきました。小野先生は重症心不全や補助人工心臓・心臓移植の権威ですが、わが国の現状についてわかりやすく解説していただきました。特に午前中に心臓移植の手術を終えられてこの講演に駆けつけたという話を聞いて、大変感銘を受けました。澤先生も重症心不全に対する再生治療(筋芽細胞シート)や心臓移植で大変ご高名な先生で、来年の日本循環器学会総会の会長を務められることが決まっています。今回はTAVR (経カテーテル的大動脈弁置換術) の現状について、最近の大規模臨床試験の結果を交えながら解説され、今後ますます適応が拡大する可能性があることを示していただきました。
今回の地方会は名古屋大学大学院医学系研究科 心臓外科教授の碓氷章彦先生が会長だったこともあるかと思いますが、心臓外科学の権威である先生方のご講演を一度に聞くことができる機会は滅多になく、大変有意義な学会参加となりました。碓氷教授をはじめ、ご講演を頂いた先生方に厚くお礼を申し上げます。

6/28 東三学術講演会

6/28 (水)には東三学術講演会が開催されました。今回の講演会では、心不全をテーマとして一般講演と特別講演の2演題が企画されていました。私は一般講演の座長を仰せつかったのですが、豊橋ハートセンター慢性心不全認定看護師の五十嵐睦美先生から「心不全増悪を繰り返す老老介護患者の在宅療養を可能にした支援」という演題名でご講演をいただきました。豊橋ハートセンターでは、心不全チームという多職種からなるチームを結成して慢性心不全患者さんの治療・支援にあたっていることを以前にも紹介しましたが、五十嵐先生は兵庫県まで通って「慢性心不全認定看護師」という専門資格を取得され、現在心不全チームの中心となって活躍されています。今回は、入退院を繰り返していた患者さんに対してご家族や訪問看護師・介護士らと連絡を密に取り合い、体重のセルフモニタリングや塩分の制限などを進めることによって再入院を予防できた症例を提示していただき、きめの細かい指導や多職種との連携が重要であることを再認識させていただきました。
特別講演では「慢性心不全の管理にトルバプタンができること」という演題名で、安城更生病院循環器内科部長の植村祐介先生からご講演をいただきました。植村先生は自院のデータを用いながら、慢性心不全は予後の悪い疾患であること、一旦入院するとADL (日常生活動作) がかなり低下すること、再入院や死亡の予測因子としてeGFR (腎機能の指標) や血清アルブミン値 (栄養状態の指標) が挙げられることなどを示されました。また心不全治療ではうっ血を改善するために利尿剤を使用することが多いのですが、利尿剤が効きにくい (利尿剤抵抗性) 場合の原因としてやはりCKD (慢性腎臓病) や低アルブミン血症、低灌流(心機能低下) の存在があることを解説されました。さらに、新規心不全治療薬 (利尿薬) であるトルバプタンの有効性について概説されるとともに、トルバプタンの実際の開始方法、使用する際の注意点 (高Na血症の危険性が指摘されています)、慢性期の使用法についてなど、多岐にわたって詳しく説明していただきました。私自身としては、かなり腎機能が低下した状態 (eGFR 20台) でもトルバプタンが有効であることにかなり驚きを覚えました。残念ながらトルバプタンは処方を開始する際に一旦入院を必要とするため、我々かかりつけ医が最初に処方することは出来ませんが、今後病診連携によりトルバプタンを内服中の患者さんが紹介されてくることも想定されます。非専門医が安全に使用を続けるためには、トルバプタン使用患者のための連携パスの作成なども必要ではないかと感じながら拝聴しました。
実は、植村先生は私がまだ名古屋大学医学部循環器内科に在籍していた当時の学生さんで、私が医局長をしていた関係もあり、彼に卒業後の研修先についてアドバイスをしたというエピソードがあります。そんな彼が循環器内科を選んでくれて、さらには第一線で活躍されていることを大変うれしく思うとともに、時の流れを感じずにはいられませんでした。五十嵐先生と植村先生の今後の益々のご活躍を祈念し、この稿を終えたいと思います。

東三学術講演会

5/31 (水) には東三学術講演会が行われました。今回の講演会は「糖尿病勉強会」の第9回にあたるもので、テーマは「シックデイ」でした。シックデイという言葉は知っていても、具体的にどのような状況をシックデイと呼ぶのか、あるいはシックデイの際にどのように対応すべきかを的確に答えられる非専門医は少ないのではないかと思います。今回のプログラムは、15〜20分程度の演題2題に加えてパネルディスカッション (症例提示2例と質疑応答) を行うことで、シックデイに対する理解を深めようとするものでした。
まず「演題1」は、豊橋市民病院の山守先生から「シックデイ管理の基本」というテーマでご講演をいただきました。山守先生は、我々非専門医でも理解できるように、「シックデイとは」という定義から始めて「なぜ高血糖に傾くか」や「低血糖に傾くこともある」、「食事量摂取量減少の悪影響」などについてわかりやすく解説していただきました。後半は「シックデイの食事摂取」や「インスリンの調整」、「内服薬の用量調整」、「入院治療の適応」など具体的な対応方法も教えていただきました。個人的には、38度以上の発熱時にはインスリン量を5割増しにすることや、食事量が安定していないうちは食後打ちで構わないことなど、特にインスリンの調整に関する内容が大変勉強になりました。
続いて「演題2」では、杢野医院の杢野先生から「シックデイを知ってもらえるために・・・パンフレットによる啓発を考える」というテーマでご講演をいただきました。現在種々の製薬メーカーが糖尿病に関するパンフレットを作成していますが、シックデイに関するものも10種類近くあることを紹介していただきました。また杢野先生は「シックデイについて患者さんに知ってもらいたいポイント」として、① 体調不良時に注意する、② 血糖コントロールが良くても起こりうる、③ 急速に症状が悪化することもある、④ 症状のこまめなチェックが必要、⑤ 早めに主治医・医療機関に連絡をとる、の5点を挙げられました。さらに「シックデイ時に患者さん自身で行う対応」についても、① 保温・安静、② 水分・ミネラル、糖質の補給 (スープ、ソフトドリンク類など)、③ セルフチェック (検温・血圧・血糖値・食事量など)、④ 医療機関との連絡、の4点を挙げられました。こういった知識を患者さんに知ってもらうためには、普段 (体調が良いとき) から我々医療者が積極的に啓蒙を行って行くことが重要だと強く感じました。
最後にパネルディスカッションとして、私 (松井) と光生会病院の山口先生から症例提示を行いました。私の発表は「自宅で転倒後に嘔気・嘔吐が出現し、インスリンを必要とした1症例」で、入院が必要か否か、インスリンの内容と投与量をどうするか、悩みながら行った経験について紹介させていただきました。その後の質疑応答で専門医の先生方から様々なご意見をいただきましたので、私自身大変勉強になりましたし、この発表が参加された先生方のご参考になれば幸いです。
今回の「糖尿病勉強会」も大変盛況で、70名を超える出席がありました。今後もかかりつけ医にとって有益な内容を提供できるよう、世話人の一人として頑張りたいと思います。
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