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小児科の廃止について

この度当院では診療科の見直しを行い、4月1日より「内科・循環器内科」へ変更しました。小児科の標榜を終了させていただくことになりましたが、この決定につきまして少しご説明させていただきます。

当院は祖父・父・私と3代にわたって地域医療に携わってまいりました。祖父の代の主な診療科は外科でしたが、父親の代になり「内科・小児科・放射線科」に標榜変更しました。父が継承したのは昭和39年でしたが、その当時は小児科を標榜する診療所が少なかったため、小児の患者さんが非常に多かったと聞いています(今でも子供の頃に父に診てもらったという患者さんがお見えになります)。その後、近隣に小児科専門のクリニックが増えたことにより当院の小児患者数は漸減しましたが、私が平成17年に継承した際も、多くの小児患者さんが来院されていました。そのため私は小児科の標榜を継続(内科・循環器科・小児科と標榜)し、引き続き小児の診療を行ってきました。内科の患者数と比べて決して多くありませんでしたが、それでも一定数の小児患者さんが受診されていましたし、小児のワクチン接種にもニーズがあったと考えています。

以上のように、新型コロナウイルス感染症(以下COVID-19)が流行する以前は、内科の患者さんと小児科の患者さんが診療所の中に混在していても大きな問題は生じていませんでした。しかしながらCOVID-19の流行以降は、慢性疾患の患者さんと急性疾患(特に発熱疾患)の患者さんを完全に分離する必要性が生じました。特に当院では高齢者や糖尿病・心臓疾患などの持病を抱える患者さんが多かったことから、より慎重な対応が必要と考えました。そのため、一般外来の時間と発熱患者専用外来の時間を分ける方法(時間的分離)を選択したのですが、結果的にほぼ全てが発熱疾患である小児の患者さんを受け入れる枠が減少してしまう結果となってしまい、大変申し訳なく思っています。

4月1日以降は全ての特例措置が終了しますので、徐々に以前のような診療体制に戻ることが予想されますが、一方でCOVID-19という病気がなくなったわけではありませんし、高齢者や持病を抱える患者さんにとって危険な存在であることにも変わりありません。そのため当院としては引き続き慎重な診療体制を取る必要があると考えています。このような情勢の中で当院の果たすべき役割は何かと再考した結果、これまで以上に当院のミッションである「高血圧、糖尿病、脂質異常症(高脂血症)などの生活習慣病の管理・治療に力を注ぎ、動脈硬化の予防に努める」ことに注力すべきと判断し、それに伴い小児科の標榜を終了させていただくことにしました。

もちろん標榜科がなくなっても小児診療を完全に中止するわけではありません。以前から当院に通院されていた患者さんなど当院での診療を希望される場合は、引き続き診療を行います。ただ乳幼児(小学校入学前)の方に関しては、より高い専門性を必要としますので小児科クリニックへの受診をお勧めいたします。また小児科関連のワクチンは全て終了させていただきます。当院で接種可能となるワクチンは、中学生以降に接種を開始する「子宮頸がんワクチン」からとなりますのでご了承ください。

今後も患者さんのニーズに応じた質の高い医療サービスを提供するため、努力を続けてまいります。ご理解とご協力の程お願いいたします。

オンライン資格確認について

大変ご無沙汰しております。新型コロナウイルス感染症の流行により何かと忙しかったので・・・というのは言い訳にしか過ぎないですね。

さて今回は学術的なことではなく、マイナンバーカードを利用したオンライン資格確認について簡単にご紹介したいと思います。なおマイナンバーカードを健康保険証として利用される方は、あらかじめマイナポータル等で健康保険証利用の申し込みをしておくことをお願いしています。(後述の顔認証付きカードリーダーでも申込は可能ですが、受付に時間がかかるため混雑が予想されます。)

さて「オンライン資格確認」とは、マイナンバーカードのICチップ等によりオンラインで資格情報の確認ができることをいいます。具体的にはマイナンバーカードを「顔認証付きカードリーダー」に置いて、顔認証による本人確認を行います。その後各種情報の取得に同意していただくと、以下のことが可能になります。

 

・薬剤情報や特定健診情報等の診療情報の閲覧

・限度額情報の取得(高額療養費制度を利用する方のみ)

 

薬剤情報とは、令和3年9月以降に医療機関を受診し、薬局等で受け取ったお薬の情報です。 調剤年月日、医薬品名、成分名、用法、用量などが分かりますので、薬の重複が避けられますし、かかりつけ医以外の医療機関を受診した場合や、旅先や災害時でも薬の情報が連携されるというメリットがあります。

特定健診情報とは、40歳から74歳までの方を対象に、 メタボリックシンドロームに着目して行われる健診結果の情報です。令和2年度以降に実施したものから5年分 (直近5回分)の健診結果が参照可能になりますので、患者さん自身が口頭で説明する必要がなくなります。さらに自分の体についてのデータを見たうえで診察・薬の処方をしてもらえることで、より良い医療を受けられるというメリットがあります。

限度額情報とは、窓口での支払が高額になる場合に自己負担の限度額(所得に応じて決められています)がいくらになるのかという情報です。これまでは事前に限度額適用認定証を医療機関に提出しないと一時的に全額を支払う必要がありましたが、マイナンバーカードを利用し情報提供に同意することで限度額を超える支払いが免除されるというメリットがあります。

 

当院では、これらの診療情報を取得・活用することにより質の高い医療の提供に努めて行きたいと考えています。

正確な情報を取得できるよう、マイナ保険証の利用にご協力をお願いいたします。

 

院内感染対策

2月以降は各種研究会が全て中止になったこともあり、「Doctor’s Topics」をしばらくお休みしてしまい申し訳ありませんでした。まだ研究会再開の目処は立っていませんが、最近はオンラインでの講演会も多くなり、特に新型コロナウイルス感染症に関する講演は時間の許す限り聴講するように心がけています。

さて本日は当院における院内感染対策についてお知らせしたいと思います。現時点で新型コロナウイルス感染症に関するガイドラインや手引きが複数の団体から出ています。厚生労働省・国立感染症研究所が中心となって作成された「新型コロナウイルス感染症 COVID-19 診療の手引き 第2版」や日本プライマリ・ケア連合学会が作成した「新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) 診療所・病院のプライマリ・ケア 初期診療の手引き version 2.0」、さらには日本環境感染学会が作成した「医療機関における新型コロナウイルス感染症への対応ガイド 第2版」などがありますが、私は特に感染管理の観点から、国立国際医療センター 国際感染症センターが作成した「新型コロナウイルス感染症に対する感染管理」と日本医師会が作成した「新型コロナウイルス感染症 外来診療ガイド」を参考にして診療にあたっています。中でも日本医師会の診療ガイドは、感染症の概要についてはできるだけ簡潔にして、流行期に求められる感染対策や外来診療の実際に焦点を当ててわかりやすく解説しています。以下、診療ガイドの項目別に当院の取り組みを考えてみたいと思います。

 

A 症状のある患者と他の動線と時間を分離する  →  当院では構造的に一般の患者さんと症状のある患者さんの出入り口を分けることが困難なため、時間を分離する方法を選択しました。具体的には「かぜ・発熱患者専用外来」を平日の11:30 〜 12:00に設け、この時間帯では一般の患者さんの診療を原則としてお断りしています (ただしかぜ症状の患者さんがいなければ診療可)。その場合はオンライン診療や電話再診を利用していただくか、時間をずらして再受診していただくようにお願いしています。もし症状のある患者さんが複数いらっしゃる場合には自家用車内で待っていただき、1人の患者さんの診療 (会計を含む) が完全に終了してから新たに診療所内へご案内するようにしています。

ちなみに一般外来を受診される全ての方(付き添いの方も含む)にも体温測定をお願いし、症状の有無にかかわらずマスクを着用するようにお願いしています。

 

B 症状のある患者を診察する際の留意点  →  感染対策の基本は「標準予防策の徹底」ですので、当院では職員全員がサージカルマスクを着用しています。私自身は以前からマスクを着用していたのでそれほど苦にはなりませんが、夏場にはかなり暑苦しくなりそうです。手指消毒についてはアルコール消毒液を、診療所入口を含めた複数箇所に設置し、いつでも手指衛生が行えるように配慮しています。また洗面スペースには紫外線・熱風を併用した手指殺菌装置を新たに設置しましたので、適宜利用していただければと思います。

ただ現在もアルコールが不足しがちのため、環境消毒には金属部分を除いて0.1% 次亜塩素酸ナトリウム水溶液を使用しています。

なお一般の診察室とかぜ症状のある患者さんを診る診察室を分けるようにしました。特に後者にはクリーンパーティションを置き、空気の流れが一方向に向かうようにして飛沫やエアロゾルの飛散を防ぐように配慮しています。疑わしい症状の場合にはフェイスシールドと手袋を着用し、状況によってはガウンとキャップも着用することにしています。N95マスクも少ないながら装備していますが、当院では検体採取を行うことはないので、今のところ使用実績はありません。

 

C レントゲン撮影における留意点  →  レントゲン室は構造上窓がなく換気効率が悪いので、サーキュレーターを設置して効率を高めるようにしています。また症状のある患者さんについては、極力連続して使用しないように注意しています (診療ガイドでは30分以上の間隔を空けるように推奨しています)。

 

D 症状のある患者の診療後の環境消毒  →  「かぜ・発熱患者専用外来」終了後と午後の診察終了後には、必ずアルコールもしくは0.1% 次亜塩素酸ナトリウム水溶液で環境消毒を行うようにしています。特に「かぜ・発熱患者専用外来」終了後には窓を開けて室内の換気を行うとともに、空気清浄機や紫外線による空気滅菌装置を併用しています。なお待合室や処置室にある換気扇は24時間onの状態にしています。

 

E その他 (院内の整備と対策)  →  受付のカウンターは開口部を狭くして、ビニールシートのカバーを設置しました。また待合のレイアウトを変更するととともに、離れて座っていただくように座席間にポスターを貼っています (クマモン使用のポスター、なお熊本市役所には使用許可を取ってありますのでご安心下さい)。なお、今のところ雑誌類は定期的に紫外線滅菌装置で殺菌した上で設置を継続していますが、流行期に入った際には感染防御の観点から撤去する予定です。

 

新型コロナウイルス感染症についてはまだわからない点も多く、情報も日々更新されています。我々医療機関も試行錯誤しながら、少しでも患者さんが安心して診療を受けられるように努力していますので、必要以上に感染を恐れて定期受診を差し控えることのないようにお願いします。特に心臓病や糖尿病、高血圧、呼吸器疾患(喘息やCOPDなど)は新型コロナウイルス感染症重症化の危険因子と言われていますので、日頃からのコントロールが非常に重要です。オンライン受診や電話再診を利用する方法もありますので、もし心配な点がありましたら是非かかりつけ医までご相談下さい。

 

*追記:5/29付で「新型コロナウイルス感染症 外来診療ガイド」が、6/2付で「新型コロナウイルス感染症に対する感染管理」が、それぞれ改定されました。特に「新型コロナウイルス感染症 外来診療ガイド」は20ページから31ページへと大幅に内容も増加しています。「必ず電話してから受診するように周知すること」や「電話や情報通信機器を用いた診療 (いわゆるオンライン診療) 」などが新たに推奨されていますが、感染対策に関しては大きな変化はないようです。

研究会・講演会の中止について

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、医療界でも研究会や講演会を延期または中止する動きが広がっています。特に先週から開催を控える動きが活発になり、2/21 (金) には日本循環器学会総会 (3/12〜15開催予定)の開催延期が発表されました。豊橋でも同様で、来週開催される予定だった研究会は全て中止の方向に向かっています。全国規模の学会はともかく、少人数で開催される研究会まで中止するのは過剰反応ではないか、といったご意見ももちろんあると思います。ただ、終息どころかまだまだ拡大を続けそうな状況下で、万が一医療関係者の中で感染拡大が起こってしまうと地域の医療体制に深刻な影響を与えかねないので、個人的にはやむを得ない措置ではないかと考えています。
なお、2/25 (火) には政府によって新型コロナウイルス感染症に対する「基本方針」が決定されるようですので、この発表を受けて豊橋医師会でも早急に対応を協議することになるかと思います。

CAD合併心房細動について考える会

1/30 (木) には「東三河 CAD合併心房細動について考える会」が開催されました。ご存知の方も多いかと思いますが、日本国内で行われた大規模臨床試験であるAFIRE研究の結果が昨年のヨーロッパ心臓病学会のHot Line Sessionで発表され、同日にThe New England Journal of Medicine (NEJM) 誌に掲載されました。AFIRE研究は、安定した冠動脈疾患を合併する心房細動患者を対象に経口抗凝固薬リバーロキサバン単独とリバーロキサバン+抗血小板薬併用との比較を行った多施設共同のランダム化比較研究です。約2年間の観察期間において、有効性の一次エンドポイント (脳卒中、全身性塞栓症、心筋梗塞、血行再建術を必要とする不安定狭心症、総死亡の複合エンドポイント) ではリバーロキサバン単剤療法群の併用療法群に対する非劣性が証明されるとともに、安全性の一次エンドポイント (重大な出血性合併症) においても、リバーロキサバン単剤療法群の併用療法群に対する優越性が証明されました。簡潔に言えば「効果は同じで副作用が少ない」といったところでしょうか。循環器領域で日本人の臨床研究がNEJM誌に採択されたのは久しぶりとのことで、専門医の間ではかなり盛り上がっているのですが、今回は広く非専門医の先生方にも知っていただくために、AFIRE研究の共同執筆者である九州大学病院 循環器内科講師の的場哲哉先生をお招きして「CAD合併心房細動患者に対する抗血栓療法のパラダイムシフト 〜AFIRE Studyの結果をふまえて〜」という演題名でご講演を賜りました。的場先生には、研究の背景となった抗血栓療法に関する最近の知見を紹介していただいた後に、AFIRE研究の研究デザインや結果、さらにはMEJM誌に掲載されるまでの裏話について、大変わかりやすく解説していただきました。特に「これまでの臨床研究の多くは“薬剤を増やす”ことに重点を置いていたのに対し、AFIRE研究は“薬剤を減らす”ことの意義を証明した研究です」という先生の言葉に強い感銘を受けました。ポリファーマシーの弊害が叫ばれている今だからこそ、我々かかりつけ医も改めて個々の患者さんの処方について考え直す必要がありそうです。
また今回は、会の後半をパネルディスカッション「CAD合併AF患者の抗血栓療法について考える」と題して的場先生を混じえてディスカッションを行い、私もパネリストとして参加させていただきました。私からは「慢性期 (12ヶ月以降) のCAD合併AF患者の抗血栓療法について考える 〜かかりつけ医の立場から〜」として幾つか問題提起をさせていただきました。我々としては、まず昨年公開された「安定冠動脈疾患の血行再建ガイドライン (2018年改訂版)」に掲載されている「図8 PCI後の抗血栓療法」を知っておくことが重要と思われます。

実はガイドラインはAFIRE研究の発表前に公開されていますが、「12ヶ月以降は抗凝固薬 (OAC) 単剤」というガイドラインの推奨が正しいことをAFIRE研究が証明したと言えます。ただし全ての症例をOAC単剤して良いのか、と言えばまだ心配な面もあるのが実情です。例としては、① 第一世代の薬剤溶出性ステント (DES) が留置されている症例や、② 左冠動脈主幹部にDESが留置されている症例、③ 虚血性脳卒中 (アテローム血栓性梗塞やラクナ梗塞) の既往がある症例、などが挙げられると思います。ただしこれらの症例はAFIRE研究の中にも少なからず含まれていますので、今後サブ解析の結果が明らかになればこれらの疑問も解決されるかもしれません。最終的に、抗血小板薬を中止して良いかどうかの判断はPCIやCABG (冠動脈バイパス術) を行った先生と十分な連携を取りながら行うべきでしょう。多くの症例はPCI・CABG施行後一定期間 (6〜12ヶ月) で冠動脈造影や冠動脈CTを行いますので、検査結果のやり取りの際に確認しておくのが良いかもしれません。
この日はあいにく複数の研究会と重なってしまったため、若干参加人数が少ない印象はありましたが、総合討論でも活発な意見が交わされ、大変有意義な会になったと思います。最後になりましたが、的場先生、本研究会の座長をしていただいた豊橋ハートセンターの寺島充康先生、同じくパネリストとして急性期の症例提示をしていただいた豊橋市民病院 循環器内科の成瀬賢伸先生に厚くお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。
 
 
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