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豊橋内科医会

10/22 (木) の豊橋内科医会研修会は、「糖尿病患者の感染管理」という演題名で、名古屋大学臨床感染統御学分野教授の八木哲也先生からご講演を賜りました。最近、新規糖尿病治療薬の登場や、それら新薬に関する大規模臨床試験の発表が続いたこともあり、糖尿病に関する研究会・講演会が非常に多くなっています。しかし今回の講演は、感染症の予防・管理の観点から糖尿病をみるという他の講演とは一線を画する内容であり、非常に興味深いものでした。
講演では、糖尿病患者さんの免疫能(好中球機能や液性免疫・細胞性免疫機能)がどうなっているのかという基礎的な内容から、実際に糖尿病患者さんが感染症を起こすリスクがどのくらい高いのか、感染症を起こした場合の死亡リスクがどの程度上昇するのかといった統計学的な内容、さらには糖尿病患者さんで注意すべき感染症とその感染管理といった実践的な内容まで、幅広く解説していただきました。中でも、血糖値が18mg/dl上昇すると感染症のリスクが6〜10%上昇することや、外科手術時に血糖値が200mg/dlを超えると術後の感染症リスクが上昇するため、200mg/dl未満を目標にコントロールする必要があること、が特に印象に残りました。幸い糖尿患者さんでも、ワクチンに対する免疫反応は正常に保たれているようなので、インフルエンザや肺炎球菌による肺炎など、ワクチンで予防できる疾患は積極的に予防することの重要性を再認識しました。
八木先生は大学の1学年先輩で学生時代から面識があったこともあり、懇親会の場でも、糖尿病患者さんが感染症を起こした場合の抗菌薬の使用方法についてアドバイスしていただきました。八木先生、貴重なご講演本当にありがとうございました。

東三学術講演会

9/30 (水) には東三学術講演会が行われました。今回の講演会は、過去2回行われた「糖尿病勉強会」の第三回にあたるもので、テーマは「インスリンBOT療法」でした。BOTとは Basal Supported Oral Therapy の略で、今服用している飲み薬を続けながら「持効型」と呼ばれる、効果が長く続くインスリンを1日1回だけ注射する方法です。これまでのインスリン治療は、1日に3〜4回自己注射を行う必要があり、患者さんにとって大きな負担となっていましたが、BOTでは注射の回数が1日1回で済むため患者さんの負担も少なく、インスリン治療を始めやすいという利点があります。またBOTは外来で開始することが可能であるため、患者さんにとっても、また我々かかりつけ医にとっても、インスリン治療に対するハードルが随分下がったと思います。
今回はまず基調講演として、杢野医院の杢野武彦先生から「外来でのインスリン導入 〜開業医でのBOT療法の実際〜」という演題名で講演していただきました。BOTの理論と実践について専門医の立場から、我々かかりつけ医に対してわかりやすく解説していただきました。
基調講演後は、実際にBOTを行った症例に関する報告が2題ありましたが、1題は私が「BOTでは血糖コントロールが困難であった一例」という演題名で発表させていただきました。今回は、BOT療法を行う上での注意点や問題点を会場全体で共有できたらと考え、あえてコントロールに難渋した症例を紹介しました。
もう1題は光生会病院副院長の山口俊介先生より、「高齢CKD症例のインスリンステップダウン」という演題名で、頻回のインスリン注射をBOTに代えて逆にコントロールが改善した症例を報告していただきました。こちらは高齢者、CKD (慢性腎臓病) という2つの問題点を持つ患者さんに対して、BOTが1つの解決策になり得ることを示していただきました。
2題の症例報告後は、期待通り (?) 専門医の先生方から様々なご意見やアドバイスが出されました。BOTの利点と問題点の両者を議論することで理解も一層深まった感があり、全体としてバランスのとれたよい研究会になったのではないかと思っています。

抗血栓療法

9月に入って急に研究会が増えてきました。先週は実に月曜日〜土曜日まで6日連日で研究会・講習会の予定がありました。さすがに全て参加することは出来ず4回の出席に留まりましたが、それでも連日の研究会参加は結構きついです。
その中で、9/8 (火) には「抗血栓療法の現状と課題 〜薬剤起因性消化管傷害を含めて〜」という演題名で、名古屋大学循環器内科講師の石井秀樹先生にご講演を賜りました。
ご講演内容は、まず虚血性心疾患に対する抗血栓薬の必要性から始まり、ステント治療時になぜ抗血小板薬の2剤併用療法 (DAPT) が必要かを、わかりやすく解説していただきました。DAPTの期間を今後どうするか(現行ガイドラインでは最低12ヶ月のDAPT期間が推奨されています)については様々な議論があり、まだ定まっていないのが現状ですが、ご講演内容から全ての患者さんに一律のDAPT期間を求めるのではなく、出血のリスクと血栓予防のベネフィットを考慮して、個別に決めるのがよいのではないかと感じました。
続いて石井先生は、抗血栓薬による消化管出血のリスクについて解説され、特に消化管出血を起こした虚血性心疾患患者さんは予後が悪いことを教えていただきました。これは、消化管出血を起こすと一時的に抗血栓薬を中止せざるを得なくなり、その結果ステント血栓症を含めた虚血性イベントが増えることが最も大きな理由のようです。そのためにも消化管出血は予防する必要があるのですが、石井先生はプロトンポンプ阻害薬 (PPI) の有用性に言及され、標準用量のPPIを併用すれば、かなり消化管出血は減らせるとのことでした。
最後に石井先生は、抗血栓薬に関する最近の話題として新規抗血小板薬および抗血小板薬の代謝酵素であるCYP2C19の遺伝子多型について解説されました。今までの抗血小板薬は、患者さんの持つ遺伝子の型によって効果に差が出る可能性があるのですが、新しい抗血小板薬では遺伝子の型の影響を受けにくく、安定した効果が望めるとのことでした。
最後のディスカッションでは、医療者間の連携について話が及びました。循環器専門医とかかりつけ医の情報共有がしっかりされることで、適切な抗血栓療法が行えますし、循環器内科医と消化器内科医が連携を密に行うことで、消化管出血の再発を防げる可能性も高まると思います。
今回のご講演内容は、自分の抗血栓療法に対する知識の再確認とブラッシュアップに大変役立つ内容でした。石井先生、どうもありがとうございました。

医師会卒後研修会

8/29 (土) に平成27年度豊橋市医師会卒後研修会が開催されました。この研修会は、医療に直接関係のないテーマでも構わないという懐の広い会なのですが、本年度は「災害時における自衛隊の活動と医療との関わり」という演題名で、自衛隊の第10特科連隊長 兼 豊川駐屯地司令の上田俊博 1等陸佐にお越し頂き、ご講演を賜りました。
今まで自衛隊の方の話を直接聞く機会はなかったのですが、東日本大震災をはじめとして、昨年の広島での土砂災害や徳島での豪雪による災害など、様々な被災地で自衛隊の方々が先頭に立って救助・支援活動をされていること、そして現地での作業は想像以上に過酷であることがよく分かりました。ただ自衛隊自身は医療行為を行えないので、医療については医療関係者と連携してトリアージや応急救護、後方病院への転送に当たっているとのことでした。
また上田氏は、災害時こそ様々な機関との連携が非常に重要であるということを強調しておられました。そして、日頃から「顔の見える」関係を作っておくことが必要だとも仰っていました。これは、病院と診療所の間の連携(病診連携)の際にも言えることですが、お互いを知っていれば情報交換もスムーズに行えるし、頼み事もしやすくなる、ということに繋がります。考えてみればごく当たり前のことなのですが、全く分野の異なる人同士で「顔の見える」関係を作っておくことは、容易なことではありません。そういった意味でも、今回自衛隊の方と面識を持つことができたことは、大変有意義だったと思われます。豊橋でも今後大規模な災害が起こる可能性が十分にあります。いざという時に、自衛隊をはじめとして、様々な分野の方々と連携して地域の医療活動にあたる必要があると感じました。

東三学術講演会

一昨日 (7/29) は東三学術講演会が行われました。今回の講演会は、4/1に開催された「東三医学会糖尿病勉強会」の第二回にあたるものです。諸事情により「糖尿病勉強会」という名称は用いないことになりましたが、その趣旨は第一回と全く変わっておらず、各医療機関の糖尿病診療力を高め、糖尿病患者さんが安全で質の高い糖尿病診療を受けられるようにすることを目的としています。
今回は「糖尿病の食事療法と指導」をテーマに、地元の糖尿病専門医の先生方に日頃どのような食事指導を行っているかを講演していただきました。

講演1「当院の栄養指導の実際 ~カーボカウントも含めて~ 」
    
杢野医院 杢野武彦 先生
講演2「診療所における栄養指導の工夫」
かわいクリニック 河合泰典 先生
講演3「糖尿病の食事療法 最近の話題」
豊橋市民病院 山守育雄 先生

まず杢野先生は、食品交換表を利用しつつ、炭水化物を50%、55%、60%にしたときの指導について説明していただきました。さらに先生は、1型糖尿病の患者さんを数多く診療していることもあり、カーボカウントについて基礎カーボカウント・応用カーボカウントに分けて教えていただきました。
次に河合先生は、いくら食事指導を行っても患者さんの意識が変わらなければ効果は期待できないため、如何に患者さんの意識を改革し行動変容をおこすかについて、ユーモアを交えながら講演していただきました。
最後に山守先生は、食事療法は糖尿病治療の要であることを強調されつつ、最近の話題である「糖質制限食」との正しいつきあい方や、SGLT2阻害薬処方時の食事療法について講演していただきました。
同じテーマを専門医3名で講演していただいたため、当初は内容が被るのではないかと思っていましたが、その心配は杞憂であり、まさに三人三様の切り口で非常に興味深く聴講しました。私が個人的に印象に残ったのは、杢野先生も河合先生も食事指導を栄養士に委ねるのではなく、ご自身でされているということでした。栄養士がいないから食事指導が出来ないというのは言い訳にすぎないということを痛感したので、もう一度食品交換表から勉強し直さなければ、と思っています。
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